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私学の経済ポジショニング[19]OECD専門家セミナーと白梅学園清修⑤

私学の経済ポジショニング[18]OECD専門家セミナーと白梅学園清修④のつづき。2008年8月29日、千代田区丸の内にある東北大学東京分室で、「専門家セミナー」が開催(主催 国立教育政策研究所 初等中等教育研究部・共催 東北大学大学院教育学研究科)され、OECD/CERI(教育研究革新センター)の評価研究プロジェクトリーダーだった、ジャネット・ルーニー氏と共に白梅学園清修の柴田副校長がスピーチをされたわけだが、なぜ東北大学の有本教授が柴田副校長を招いたのか。

*テーマは「キーコンピテンシーと形成的アセスメント」。

☆その点について、先進事例としてしかあまり考えが及んでいなかったが、本エッセイを書きながら、ふと気づいたことがある。なかなか先に進まず本題からそれるかもしれないが、極めて重要なことなので、忘れないうちに、書きとめておきたい。

☆形成的アセスメントというと、どうしても生徒の学びのプロセスに目がいきがちなのだが、白梅学園清修に入学する時点でもそれがあるのだ。入学試験それ自体は、総括的アセスメント(サマティブ・アセスメント)。つまり何点取れたかで合否という評価が決まる。

☆しかし、入学してすぐにチームベースのオリエンテーションやプログラムが始まる。しかもそのプログラムは入学者が決まってすぐに調整されるのだ。もし入学試験の結果だけでプログラムを作るとなると、こういうきめ細かい作業は不可能だ。入学試験以外に何がなされているのか?何もなされていないのだ。

☆ただし、多くの生徒は白梅学園清修の教師、特に柴田副校長とは、学校説明会終了後の個人面談(相談会)で対話をしている。あっ、そうか。ここから生徒の特長を把握しているのである。

☆これらはまったく合否には関係がない。ただ、入学後すぐにどのように一人ひとり育てていくか担任を中心にプランを立てるためのデータになる。形成的アセスメントの特徴は、とにかくその生徒のデータを細かく大量に収集し、分析するところから始まる。

☆なるほど、有本教授の直観は的中したわけだ。大学進学実績や偏差値にこだわらない入試。つまり、教育の質で勝負する入試とは、言いかえると総括的アセスメントよりも形成的アセスメントを重視する入試ということなのだ。もちろん、合否は現状では総括的アセスメントで決まっている。何せ受験という既成のシステムがあるから、そこを無視するとマーケットから締め出されてしまう。

☆現状では、合否は総括的アセスメントで、そして入学するや否や生徒一人ひとりの育成プランを立てる際には形成的アセスメントでというシステムを構築していたのだ。

☆これはすごいことなのだ。なぜかというと、総括的アセスメントによる合否の判断基準は、得点数の大きさなのだが、形成的アセスメントによる生徒一人ひとりの知性(感性も知力も倫理性も含めて)の構造(特徴)を測るには、白梅学園清修独自のかつより公共性の高い(信頼性・正当性・妥当性のある)判断基準が確立されていなければならないからだ。

☆あっ、これが今回の専門家セミナーのもう1つのテーマ「キーコンピテンシー」の話だったのだ。あるいはセミナー中に話題になっていたクライテリア(criteria)だったのだ。

☆一人ひとりの生徒の知性の構造は違うのだが、その違いを明確にするためには、いくつかの要素をチェックする判断のポイント・基準があるはずだ。柴田副校長の場合だったら、

①集中力

②柔軟性

③協調度

④傾聴度

⑤トレーニング度

⑥忍耐力

⑦謙虚度

⑧熟考度

⑨リーダーシップ

⑩尊重姿勢

⑪開放性

⑫倫理性

⑬表現力

⑭創造力

⑮寛容性

ぐらいを瞬時に見抜く目を持っている。要素として分解してはいるかもしれないが、判断するときは包括的なのだ。

☆入試問題の得点が高いからと言って、以上の資質がすべて十分という生徒はいない。逆に得点が低くても、これらの資質の中でたいへん高い質を持っている生徒もいる。徹底的に生徒と話し合い、生徒の態度を見守るチャンスをつくることで、生徒の全体的な人間力が見えてくる。6年間で人間力の基礎を育成できるシステムが形成的アセスメント。総括的アセスメントで、どんなに高得点がとれる子でも、人間力が弱い子どもは、世の中にいっぱいいる。もしかしたら大学卒業後も、高得点力低人間力という社会人は増えているかもしれない。

☆このような社会問題の横たわる今日にあって、白梅学園清修がそれを解決するフロントランナーであるかもしれないということなのである。

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