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09年中学入試に向けて[23]渋幕のカリキュラムの一貫性

☆電車に乗ると、日能研のあの「シカクいアタマをマルくする」が目に入ってきました。渋谷教育学園幕張(以降は渋幕)の算数の問題が掲載されていました。思わず解いてしまったのですが、なるほど渋幕のカリキュラムは一貫性があるなと感心しました。

☆2点AとB、そして直線があります。直線はABの間にはありません。そのとき直線上のある点Pを通過して、AからBに行く時、A→P→Bの距離が最小になるときのPを作図しなさいという問題を思い起こしてください。この問題の応用が今回の渋幕の問題でした。

☆垂直とか垂直二等分線とかをどう描くかがポイントなんでしょうが、要は角度と線分なんです。この2つは回転の概念とベクトルの概念のトリガーなんですね。

☆概念が物質化する。つまり見える化としては、今回の条件では二等辺三角形がイメージできるとよいわけです。

☆中学受験の段階では、この「概念」という媒介項は学びませんから、物象化した二等辺三角形で解けばよいわけですが、このような問題を出題する意図は、「概念」の物象化の熟練を要求しているわけですね。

☆算数から数学に移行するには、この「物象化」という当たり前になっている考え方を、中学の数学の授業の中で解放する作業が必要です。「物象」から「関係性」の「概念」へ導き、再物象化できるようにするのです。

☆面積図を活用するのが巧みで、そのために算数が得意だった生徒が、ときどき数学に飛べない期間があります。面積図は積分関数の一つであるという概念と結びつくまでに、時間があくのが通常のカリキュラムですから、再物象化できないまま悶々としている生徒もいるんですね。ここは中学受験塾の算数の講師が数学的背景を持っていないときにおこるリスクです。

☆さて、それはさておき、中学受験では、直観的に物象化。だからそのままだと型から外れないんですね。再物象化は、関係化ともの化を意識して行ったり来たりできることです。この再物象化をするには、中学受験の時に初等幾何の型を徹底的に学んでおくといいわけです。先に述べたリスクも当然あるわけですが。

☆再物象化の前提としての物象化ができていないと、解放しようがないからです。作図というのは物象化する作業ですね。これができないと、微積分がうまくいかないのです。

☆そして、この作図ができて、なおかつ再物象化ができる状態になっていると、行列や三角比で解くはずの問題が、初等幾何の発想でも解けてしまう。あるいは解法の方向性を見通せるのです。極端な話、東大の数学の問題を、中学生の段階で解けてしまう場合があるのですね。もちろん、東大の問題を解くことが目標ではありません。「物象化→概念(関係化)→再物象化の循環」こそ、思考力のプロットタイプです。

☆渋幕の人気、教育の質の高さ、実際に進学実績で結果も出している。文句のない名門中学なのですが、その本質を、算数の入試問題で解読することができるのですね。渋幕の算数の中学入試問題は、中高のカリキュラムに結びつき、思考力育成にまでつながっているのですから。この知の一貫性が渋幕の本当の魅力なのでしょう。

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