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09年中学入試に向けて[33]東京純心女子中の入試変更の意義

☆来春から東京純心女子は、2月1日(日)午後に、定員40名の【1日午後SSS】入学試験を新設します。 名称は、「スカラーシップ・スチューデント・セレクション」(奨学生選抜)の頭文字をとっているようです。成績優秀者15名を選抜し、入学金(24万円)免除の特典を与えるシステムです。入試科目は2科目。それから、2次(2/3)試験の入試科目は2・4科選択から4科目へ変更に。

☆2回目の入試の応募者はたしかに少し減少しているので、その巻き返しと2月1日のサンデーショックを見据えた広報戦略の一環として変更したと受けとめればそれまでですが、どうもそれだけではない何かもうちょっと違う路線があるのではないでしょうか。

☆2011年に高校募集を廃止し、完全中高一貫校になる予定だということですが、これは広報戦略ではなく、12歳から18歳までの人間形成基盤の最終時期の教育の質の問題です。こちらの方の問題なのかもしれません。

☆一見広報戦略のようにも思えます。ホームページを見るとこんなセンテンスが目に入ります。

本来ならば4科目で受験していただきたいのですが、受験生の負担を考慮し、受験科目は、2科目(国語・算数 各50分・100点満点)とします。

☆顧客満足度という観点から言えば、最高のサービスですが、2回目と3回目は、「本来ならば」という条件に従って、4科目入試なのです。この本来を崩してまで、なおかつ入学金もいりませんという入試をやる広報戦略的意味がわかりません。

☆しかも、次のようなセンテンスまであります。

1日午前で他校を受験した皆さんのために、学校外の会場を2箇所準備しました。立川会場(代々木ゼミナール立川校)と八王子会場(駿台予備校八王子校)です。

☆SSS入試の募集定員は40名です。そのために会場を2箇所も用意するとは・・・。それはたしかにですよ、午前中他校を受けて、15時に集合するのですから、4科目入試だと帰宅時間が遅くなり、次の日の受験にも影響するでしょう。また午前中受けた学校から八王子までは遠いかもしれませんから、受験生には負担がかかるかもしれません。

☆だとしたら、そこまでして、つまり、学校東京は、コストと気配りを投じ、受験生も負担に思い、それにもかかわらず、このSSSを実行するというのは、どこに意義があるのでしょうか。

☆広報戦略としての意味はなさそうですね。だとしたら教育の質の問題なのです。しかし、たんじゅんに優秀な生徒を獲得して、学力向上を目指すというのでは、これまた意味がわかりません。1日の午前の受験生にも優秀な生徒はいるでしょうし、2回目、3回目にもいるでしょう。そこの歩留まり率をあげるほうが重要だし、そのためには、むしろ午後入試よりも、一般入試の成績優秀者に奨学金制度を充実させたほうがシンプルで負担もかからないはずです。

☆ということは学力向上という意味の教育の質の問題ではないということです。では何なのでしょう。それは、おそらくSSSで解消できるような問題でもないですが、学内で、この物質的で唯物主義的な社会にあって、東京純心女子の建学の精神を忘れないようにしようという決断なのではないかと思います。

☆合理的で効率のよい経済原理だけで動くと、建学の精神は忘却のかなたになってしましますからね。創設者江角校長の精神とともに純心の教育に形成に尽力した医学博士永井隆の精神を忘れてはならないという決断だと思います。

☆江角校長も永井博士も、浦上天主堂に落とされた原爆の被爆者です。唯物主義者だった永井博士は浦上天主堂の鐘に導かれ洗礼を受け、精神主義者に転換したのですが、さらに被爆という十字架を背負わされます。江角校長も同じ十字架を背負ったわけです。

☆この十字架の背負い方に関しては、特に永井博士の書物は、世界を揺るがす賛否両論を巻き起こしました。原爆の日がやってくる度にこのことは世に問われます。しかし、多くの日本人は、それと東京純心女子の深い深いつながりなど知る由もありません。

☆そういう意味では、SSS入試は、特別な意味を持つ生徒に門戸を開くという意義があるはずです。東京純心女子の歴史は、一つの学校の歴史であると同時に人類の歴史性を巻き込んでいる普遍的な学校です。世界の痛みを受け入れ、その解決に挑む女性が育つ学校です。物質的にはその光景は失われましたが、永井博士が唯物主義から精神重視主義に新しく生まれ変わる光と響きにつつまれた浦上天主堂の光景がそのまま東京純真女子の空間にあります。

☆正門からはいるとガーデンがあって、ルルドが出迎えてくれますが、あの光景が何を意味するのか。小さき草花を手入れしながら、原爆でなくなった長崎純真の生徒たち、その後も彼女たちのためにガーデンを手入れする江角校長。永遠の課題はルルドの泉が枯れない限り存在しつづけます。

*参考文献)「新版 焼身 長崎の原爆・純女学徒隊の殉難」高木俊朗(角川文庫)

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