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09年中学入試に向けて[35]中学入試における鴎友学園女子&共立女子の意義

☆前回、≪私学の系譜≫と「受験市場」のジレンマについて指摘しました。≪私学の系譜≫を継承している偏差値の高い男子校は、優秀生を囲い込み、東大合格実績を競う「受験市場」を結果的に強化すると。

☆開かれた知を育成しながら閉じられた知の社会を強化していく可能性の方が大だということです。もちろん、知の鎖国は、外部から崩されますが、植民化されないためには、内部の中に開かれた知が水面下に浸透している条件設定が肝要です。

☆戦後の教育基本法の成立過程がその象徴でした。ですから、表層的には、「受験市場」の強化になっていますが、≪私学の系譜≫を保守することが、これまた逆説的に新しい教育の質の市場が開かれるチャンスが広がっている可能性も残されています。

☆さて、女子校の場合ですが、そのチャンスのあり方が、男子校とは異なります。≪私学の系譜≫を保守しながら、「受験市場」の強化に陥っている学校は、実は偏差値が高い学校しかないのですね。東京において女子校は男子校に比べ倍以上あります。そして、東大合格をたくさん出している学校は桜蔭だけです。次に続くのが女子学院や豊島岡、白百合です。卒業生の数の少なさを考慮すれば、雙葉もそうですね。フェリスや吉祥女子、大妻もこの仲間に入ります。

☆結果的に「受験市場」を強化してしまうという宿命を背負っている学校です。豊島岡がもし2月1日に試験日をシフトするなんてことがあれば、相当変化があるのですが、それはないでしょう。大妻はすでに2月1日にシフトしましたが、当面の目標として東大合格者を輩出することは無視できないと思います。

☆そういう中で、鴎友学園女子と共立女子は、この女子偏差値トップ層のジレンマを解消する可能性を持っています。しかしこれは輝かしいものではありません。思いっきり背負う決断をしなければならないし、今のところ決断しているわけです。

☆女子校は偏差値が高くない方が、自由が利くわけです。男子校は数が少ないし、社会構成上、男子の学歴社会の同調圧力との闘争がありますから、偏差値の高低にかかわらず、「受験市場」の圧力を無視できません。

☆しかし女子校は、その社会構成の同調圧力を逆手にとることが可能です。女子校の「受験市場」はもともと「ブランド消費市場」という側面を持っています。ここを逆手にとるわけですね。女子校のブランドは東大ではありません。もちろんその一つではありますね。東大出身のタレントさんが重宝がられる昨今です。しかし、東大進学以上の教育の質そのものをブランディングできるわけです。

☆ところが偏差値が高くなると、女子の社会進出にともなって、社会構成上の同調圧力に耐えなければなりません。そんな中で鴎友学園女子と共立女子は、同調しなくても高い偏差値を維持しているわけです。

☆しかも複数回数入試を実施し、2月1日にも試験を実施し、「受験市場」に同調するより≪私学の系譜≫の浸透力に力を尽くしています。これによって、学校選択者のものの見方が変わる可能性もあるわけです。

☆ところで、このような両校のビジョンは、今生まれてきたのではないのです。歴史的な条件が揃っているのです。前者は内村鑑三という開かれたプロテスタンティズムにルーツがあります。共立女子は、創設時当時から多くの傑物とコラボレーションしているし、戦後はEUの父クーデンホーフ・カレルギーの友愛革命の思想と結びついています。

☆共立女子の偏差値がトップ層と比べれば若干低いではないかとお思いの保護者もいるでしょうが、他に比べ、女子校の中では募集定員が多いのです。100人とか200人とかではなく、300人を超えるのですから、もし鴎友学園女子と同じように200人ぐらいに定員を少なくすると、偏差値はグーンと上がりますね。しかし、そんなことはやらないわけです。あくまで本物志向の普遍主義≪私学の系譜≫を貫くわけですね。

☆かくして、中学入試における女子校の選択は、日本社会の動きを重視するのか、来るべき国際社会の動きを重視するのか、あるいは、「受験市場」よりなのか、≪私学の系譜≫よりなのか、どのようなバランスで選択判断するかという重大な問題が背景にあります。

☆中学入試は、日本の未来にも影響を与えるわけです。ちょっと大げさではないかと一笑に付されるでしょうが・・・。とにかく、そんな思いで「名門中学の作り方」(学研新書)を書いてみました。

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