私学の経済ポジショニング[27]OECD専門家セミナーと白梅学園清修[了]
☆私学の経済ポジショニング[26]OECD専門家セミナーと白梅学園清修⑪のつづき。白梅学園清修の形成的評価活動がOECD/CERIのジャネット・ルーニー氏の考え方とどれくらいマッチングしているのかについて観てきた。ルーニー氏の形成的アセスメントを構成する6つの要素に照合しているのだが、どうやら要素3までのマッチングで十分であるという気がしてきた。要素4以降は、要素3までに照合してきた清修の活動ですべて語れてしまうからだ。もはや要素5と6について語る必要もないが、念のため確認して今回の作業は終了ということにしたい。
☆要素5は「生徒の学力達成状況へのフィードバックと確認されたニーズに応じて授業を合わせること」。サブテーマは2つ。
1)効果的なフィードバックを与えるとは、
●タイムリー
●特定の
●改善の示唆を与える
●児童生徒達成事項への期待に関する明示的なクライテリアに結ばれる改善のための示唆を含む
●学習の成果物というよりはプロセスに焦点を当てる。
2)フィードバックプロセスで集められた情報は、児童生徒のニーズに教師が授業をよりよく合わせるのに役立つ。
☆フィードバックは質問―回答の連鎖であるコミュニケーションと同じである。また、生徒のニーズに合わせて授業を改善する教師同士のコミュニケーションは日常茶飯事。この要素も十二分に満たしているといえる。
☆要素6は「学習プロセスへの生徒の積極的な関与」。サブテーマは4つ。
1)足場組の学習
2)生徒が学習方略(戦略)のレパートリーを作りだすのを手助けすること
3)ピア(仲間による相互)アセスメントや自己(把握・申告)アセスメントのための技能の機能
4)生徒の役割をピアアセスメントと自己アセスメントを活用して高めること
☆この活動は、入学するや始まる。チーム学習、議論、自己評価、チームビルディング、ロールプレイ、編集、プレゼンテーションなどがすぐに始まる。これら自身が足場組の学習でもあり、電子ボードを活用した授業やイギリス研修のレポートづくり、数学のレポートづくりなどに飛び火していく。セルフラーニングタイムはその結晶態だろう。
☆かくして白梅学園清修はOECD/CERIの考える形成的アセスメントの教育活動をパーフェクトに満たしている。ゆえに、今回の専門家セミナーで報告を要請されたのであろう。
☆ところで、この形成的アセスメントができるには、ある大きな条件がある。それは授業のシステムが従来の知識の不足を補う座学形式ではできないということである。古くて新しいこの活動。なぜ日本の教育システムになじまなかったのか。それは当然だろう。一方通行的情報伝達・確認の講義形式が中心だったからである。
☆もはや言うまでもないが、私はしつこい性格なので、確認したい。白梅学園清修で形成的アセスメントが完遂されているということは、他校にはない授業システムが浸透しているということであり、このシステムを理解できる中学受験生とその保護者、そして塾関係者は相当見識があり、未来志向であるということである。つまり白梅学園清修の教育の質を理解できるかどうかは本質的教育を理解できるかどうかの試金石=クライテリアなのである。
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