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中学入試と人間形成[01]

☆どんな環境においても子どもっていうものは自分の足と腕と頭脳でサバイバルできるのだからそんなに勉強させないで、自由にやらせたほうがよいよなんてノンキなことを言う親はいない。と、言いたいところであるが、果たしてそうだろうか。

☆たしかに、荒れ狂う世界の金融市場や不動産市場、食品の安全崩壊に囲まれて、実際生活にその影響が直撃している今日、子どもの将来を不安がる親の方が多いだろう。この不安がどういう抑圧構造から生まれてきているのかについては思考停止するようにセットされた学習指導要領下のおかげで、学習市場・受験市場に並んだ教育商品を購入することで、一時の安心を得ては、日々一喜一憂しているというのが現状なのではないだろうか。

☆しかし、その結果、思いもよらぬ事態を招くのである。島国・タコツボ以外ではサバイバルできない日本人を・・・・。ムム・・・?一見ノンキではないが、結果は同じということか・・・。

☆ここのところ15歳問題[04]問題の周辺④などで、人間形成のパラダイムを図式化してきたが、これを使って、不安が生じる理由を考え、中学入試を選択することの意義と選択したくてもできないことが官僚近代教育の大きな問題であることを考えてみたい。

☆苅谷剛彦教授や佐藤学教授が、私立中高一貫校の入試に関して、階層構造や格差社会の強化システムとみなしていることは、実質的に文科省のメンバーあるいはサポーターであるから当然の成り行きだが、実は官僚近代教育のリスク隠ぺいのためのスケープゴートづくりなのである。

☆結論先取りでいくと、官僚近代教育は、人間形成の知域(人間の感性・知性・倫理的精神のトータルな領域の幅)をタコツボ社会サイズに制限しているということなのである。それがOECD/PISAの外部リサーチによって、明らかになりつつあるものだから、全国学力テストを実施し、あたかもそれが、OECD/PISAのテストと等価であるという共同幻想を作る流れになっている。

☆教育システムとは、自然・精神・社会のトータルな生態系思考をもった創造的人間形成の熟練システムであるはずが、この三者を分断しているのが官僚近代教育のである。私は前者の三位一体教育を≪私学の系譜≫とみなし、後者の分断教育を≪官学の系譜≫とみなしている。

☆さて、「15歳問題」で使用している人間形成パラダイムの座標で、公立中学と公立中高一貫校、麻布、鴎友学園女子、白梅学園清修の選抜時から卒業時までに形成される知域の変化を図にしてみよう。

☆90%の子どもは公立中学に入試なしで進学する。10%の子どもは、国立・公立・私立の入試を経てそれぞれの中学に進学する。この全体のシステムが選抜というシステムなのである。この事実を隠ぺいしているのが官僚近代教育のシステムである。入試をしないというのも選抜なのだ。公立中高一貫校の存在がそれを露呈している。名称が適性検査であろうが、入試に違いはない。いや違うなどと当局はこだわるが、「裸の王様」と同じ理屈にすぎない。したがって、公立でも入試のあるところとないところがある。これを選抜システムというのだ。だが、それはそうは言えまい。

☆だから私立中学をスケープゴートにする。塾をバッシングする。もっとも塾側もそこを明確に意識すればよいのだが、バッシングするシステムを必要悪への反応として受け入れてしまっているのも問題・・・。

☆ともかくまずは図を列挙しよう。公立と私立との間に違いがあることや私立の中でも違いがあるのがわかるはず。また私がなぜ09年中学入試に向けて[58]なぜ白梅学園清修が気になるのかを書かねばならないかも理解できると思う。

☆「選抜→教育プログラム→進路」という教育システムの中で、白梅学園清修の教育プログラム作りに日々奮闘努力している教師のパワーがすさまじいからである。それは選抜時の知域と卒業時の知域の膨張率が、麻布、鴎友学園女子に比べ尋常ではないからだ。それは図を見ればまずは明らかではないだろうか。もちろん仮説ではあるが。

(つづく)

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