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09年中学入試に向けて[54]国学院久我山のめざす知

☆「09年中学入試に向けて[48]国学院久我山 特進コース強化」において、STクラスの開設の大きな目標は、東京大学や一橋大学をはじめとする最難関大学への現役合格であるが、それだけではなく、「経営の倫理」や「教育の倫理」が見え隠れしているのではないかと指摘しました。

☆東大など最難関大学進学準備の学びを通して、それ以上の付加価値が得られる授業や環境をつくることが目的ではないかということなのですが、やはりそうでした。今回今井寛人教頭にお話を聞く機会と中3の女子部の数学の授業の様子を拝見する機会を得て、そう実感したのです。

☆中3の女子40名の授業はインパクトがありました。谷川俊太郎さんが翻訳したレオ・レオニーさんの「スイミー ― ちいさなかしこいさかなのはなし」を思い出したぐらいです。授業における教師と生徒のコミュニケーションのタイミングが絶妙なのです。ちいさなさかなたちが一丸となって大きなさかなの形になり、教師の質問に、個々人が解答するのですが、それがバラバラではなく、かといって一人の生徒が解答しているのを、じっくり聞いて次の生徒が発言するのを待つというのでもないのです。絶妙の問いと答えとそれを互いに聞きながらもなめらかなリズムと速度感のあるコミュニケーションが成立しています。

☆このようなコミュニケーションが成立するのは、生徒一人ひとりの問題を解く認知の過程を見れば合点がいきます。幾何の問題を解いていたのですが、生徒たちは補助線を引くとどうなるかをイメージし、書きこんでうまくいかない場合は、どの角度、線に注目すべきか方略を変更して補助線を引きなおす過程を繰り返していました。

☆全体をイメージし、知識やルールを細部に照合して全体の構造を組み立てるのですね。そして矛盾が生まれたらやり直すという試行錯誤を繰り返すのです。全体と細部、構造、試行錯誤の繰り返しができているのです。

☆全体のイメージは創造的思考の萌芽です。試行錯誤は批判的思考の萌芽です。構造は論的思考の萌芽ですね。OECD/PISAの思考のレベルでいけば、レベル4からレベル6の思考力の育成に相当します。学習指導要領では、知識の確認(レベル1)、知識の整理(レベル2)、知識の分類と照合(レベル3)まで鍛えれば十分なのですが、国学院久我山では、レベル4(論理的思考)、レベル5(批判的思考)、レベル6(創造的思考)まで熟練できるわけです。

☆今井教頭は「高校卒業するまでに、メタ認知能力を身につけてもらいたい」と認知科学の最終目標をねらっています。メタ認知能力とは、複眼思考ができること、自分の視点を批判的にチェックして他の視点と置き換えることもできることなどなど振り返ることができる知を意味します。

☆ものごとをレベル3までの思考レベルでとらえていると、実はモチベーションを持続できないし、分野を横断して統合することも困難です。与えられたことはこなせるのですが、自ら何かを生み出していくことはなかなか難しいのです。

☆しかし、自ら生み出すことができたらどうでしょう。こんな楽しいことはないのです。だから、国学院久我山の数学の授業ではとにかく別解を考えることを大事にしています。メタ認知能力は、高度な知性ですが、同時に全体を俯瞰する知性でもあります。相手の立場に立って物事を考えるには、互いの全体の立ち位置を想像できなければなりません。

☆今井教頭は、「生徒から、STのSは、3つのS以外に、支えるという意味もありますねと話しかけられたことがあるのです。互いに考え方を話し合う機会も授業の中では大切なのですよ」と。まさに数学を通して、高度な知とコミュニケーションの質感の両方を学ぶ機会を作っているということなのでしょう。

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