09年中学入試に向けて[61]神奈川学園 21世紀教育プラン第2ステージへ[了]
☆「09年中学入試に向けて[60]神奈川学園 21世紀教育プラン第2ステージへ[03] 」のつづきです。湊谷校長は、学びには「意味」があるし、「目的」があるし、だからこそ「面白さ」を見つけることができるんだと語りました。
☆学びは楽しいだけでは、自分の身の回りにしか興味をもたないということになりかねません。自分の回りから他者に、社会に、世界に探究の想像を広げていける楽しさを感じてほしいというのが神奈川学園の思いなのでしょう。
☆そのために学びの「意味」も「目的」も自覚できる学習環境を構築しているということなのだと思います。さて、このような学習を、アメリカの教育学者デイル・パネル氏は「文脈学習」と呼んでいます。
☆授業中、生徒が「なんで幾何なんて勉強するの?」と教師にたずねるシーンはよくありますね。このとき「将来役に立つから」とか「大学入試に出るから」と答えがちです。パネル氏は、こんな授業を「冷凍庫アプローチ」と称して批判しているわけです。
☆神奈川学園では、このアプローチではなく、「文脈学習」なわけです。目的や意味や学びの方法論を学べるようになります。
☆入試問題は学校の顔とよく言われますが、神奈川学園の入試問題もそうです。「文脈学習」の方法論が活用されている問題が出題されていますね。
☆たとえば、今春の社会のファイナル問題は画期的ですよ。国民のどれくらいの人が飢えで苦しんでいるのかを示すアフリカの地図を提供したうえで、「アフリカは世界でも飢えが深刻な問題になっている地域です。中には国民の7割もの人が栄養不足になっている国もあります。このような深刻な飢えの問題はなぜ起きているのか、その理由を考え、人々を飢えから救うために必要なことを説明しなさい」という問題を出題しているのです。
☆まさに「文脈学習」が生かされる問題です。国際経済の中におけるアフリカの現状、アフリカの国々における欧州の植民地政策の歴史などが前提情報として必要になります。そうした背景知識があれば、飢えを引き起こす社会現象として「戦争」や「自然破壊」、「感染症」を指摘し、さらにその現象が生まれたのは、資源争奪の国際政治経済や開発による自然破壊という人間の行為が問題だということがわかります。ここまでくれば救済政策は、国際政治経済のあり方や自然環境の保護、特に温暖化を回避する対策について記述することができるでしょう。
☆ポイントが4つぐらいありますから、このうち3つ満たしていれば満点なのでしょうが、受験生の20%が完答しています。53%の受験生が中間点をゲットしています。どうやら神奈川学園を受験する生徒は、すでに学園のカリキュラムの準備段階に立っているようです。
☆このように、入試問題によって、入学前から文脈学習のメッセージを投げかけているシステムが出来上がっているのですから、これからも神奈川学園が教育の質をアップし、その成果をだしていくという期待値は高いですね。
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