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09年中学入試に向けて[79]なぜ中村中がおもしろいのか

☆昨日中村中(東京都江東区清澄)で、昨年末から行ってきた生徒の活動の報告があった。「CFEP」という環境問題に取り組む生徒活動について。報告者は梅沢辰也教頭だったが、たんなる報告者ではなかった。

☆報告には実際に活動に携わっている生徒も参加したし、学内環境を光熱費の経費削減というスタンドポイントから見ている事務局スタッフも参加した。梅沢教頭は、「CFEP」で生徒を指導する教師であり、報告者であり、生徒や違う立場のスタッフとパフォーマンスを演ずる共演者でもある。なるほどコーディネーターのロールプレイをしていたのである。

☆「CFEP」とは“Change Future Ecology Project”の略で、政治経済・文化・生活を貫き通す大きな問題である環境問題を問い返す活動である。たとえば、森林保護の活動は、本当に環境問題を解決することになるのだろうか?そもそも環境問題という概念は何だろう?自分たちの学園生活は、はたして環境にやさしいのだろうか?などを問い返す行動をとるという学びの活動。

☆教室の中で議論して解決策を考えるだけではなく、教室から出て問い返す行動をとる。考えることと行動することが同時並行なのだ。問い返すとか行動をするとなると、必ずそこには相手が存在する。

☆学内の教職員だったり、生徒どうしだったり、企業や自治体など外部の人だったり、コラボする場合もあるだろうし、葛藤が起こることもあると2人の生徒は語っていたが、この対話と行動が、梅沢教頭の言う「多くの人の意識の奥に化学反応を起こして、変化を与える」のだろう。

☆この問い返しと行動は、ワクワクドキドキもするが、躊躇する気持ちも同時に生み出す、勇気と自信がベースにないと飛び出せない。「CFEP」のメンバーの中で葛藤が生まれる。この葛藤をどのように解決するのだろう。このプロセスは実にスリリングだし、メンバーどうしの別れも当然生み出す。

☆残った生徒は「CFEP」で活躍し続けるが、去っていったメンバーは、去っていったメンバーの重要な役割を果たし続ける。「CFEP」に残ったメンバーは、自分たちの目標とビジョンに向かって行動を続け他者の意識を変えようとするのであるが、去っていったメンバーの存在は、つねにそのビジョンと目標とチームの作り方や対話の方法について、それで正しいのか問いかけ続ける。メンバー自身の自問自答の心的状況を置き土産として残していく。

☆このときそんなの関係ないと割り切るか、離散した状況の改善を生み出そうとするのかはこれまたスリリングであるが、それを見守る教師としては、両者の歩む道を受け入れながら、互いに価値観の違いを受け入れ、それぞれの価値観のよいところを生き「型」にして欲しいと願い、サポートするだろう。コミュニケーションは余りに複雑すぎる。

☆このコミュニケーションのケイオス状態を受け入れられる環境は、授業やプロジェクトを超えて、学校全体の教育システムに求められる。もともとシステムは複雑でコストがかかることは合理的に圧縮しようとする。だからこういう活動そのものを積極的に認めようとしないものだ。

☆このシステム側とコミュニケーション側との間の壁をどのように解消するのか。生徒自身がこの壁を実感し、解消する行動をとっている。教室の外、学校の外に出る活動を開始したとたん、そこには経費がかかることに気づくのだ。ではこの経費はどこからねん出するのか。生徒会の予算に計上してもらえないのか。そうするためには、企画書や発信の仕方を考案しなければならない。外に出ようというのはよいが、どこに行くのか、そこでまた何を依頼し、理解をいかにして得られるのか。

☆従来の授業のコミュニケーションでは教育の倫理でやっていけていたのが、外につながろうとするや、教育の論理が登場する。マーケティング、マネジメント、そして営業。まさに(社会)起業の論理そのものを学ばねばならない。

☆一方教育システム側は、光熱費経費削減という経営の論理が、生徒が学内環境問題に取り組み、それが削減につながることを(どれくらいすごいのか具体的数値はまだ生徒には公表していないということなので、ここでは公表しない)認識するや経営の倫理の精神が生まれる。

☆「教育の倫理と論理」と「経営の論理と倫理」がかけ合わされると、壁は解消する。その実感を事務局スタッフの方が身を震わせて報告していた。

☆コミュニケーションの多様化・多層化、システムとの同期。そこには人間関係の豊かな(楽しいことばかりではないが)空間が現れる。中村中がおもしろいのは、この豊かな人間関係の空間があるからだろう。

☆ところで、報告会が始まる前に、友人に中村中の教育空間を味わってもらいたくて、少し早めに訪れた。突然だったにもかかわらず、一人の先生が丁寧にもてなしてくださった。実に興味のつきない学園である。

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