09年中学入試に向けて[101] 偏差値50の子は、クオリティ・スクールを選ぶ方が良い
☆ここ最近、東横学園の矢島校長、二瓶副教頭、富士見丘の吉田校長や進路指導の先生、淑徳巣鴨の中川校長や生徒たち、東京女子学園の實吉校長、白梅学園清修の柴田副校長、聖学院の平方校務部長、かえつ有明の小板橋校長補佐、横浜女学院の平間教頭の話を聞いたり、ベネッセの新しい事業をサポートしている東大生たち、若きイノベータの仲間たちと話をしたりしていて、つくづく思うのは、偏差値50という数字は、ある一部の子どもたちに適合する学力構造(Aとしよう)を塾が作り上げて、その学力Aに合わない子どもたちを排除していることを意味していると思う。
☆上記に挙げた私学は、高偏差値の生徒ばかりが入学しているわけではないが、この3年から7年の間の改革が証明しているように、生徒の本当の意味での学力を伸ばしている。何と言っても、生徒たちは、自分に自信をもち、先生や仲間たちに感謝しつつ、生きていることに価値を見出している。
☆私が会った東大生やイノベータの仲間たちも、非常に柔軟でA学力に縛られていない。いわゆる御三家レベル出身や海外の有名大学出身もいるが、それはA学力を利用しただけで、拘束されているのではないのだ。
☆あくまで塾の指導から見た圏内での指標がA学力ありきなのである。しかし学校側からみると、あるいは塾経験者でもそこを居場所としていない生徒にとって、A学力なんてone of themに過ぎない。中学受験時のA学力なんて、まったく東大に合格するのに関係ないのである。
☆ただし、麻布や開成の入試問題は、大いに関係ある。ある東大生も言っているが、どれだけ入試問題の点数をとれるかという得点力ではなく、考える力なのだ。考える力があるからといって、模擬試験や入試問題で高得点をとれるかというと、必ずしもその因果関係はない。
☆だから、富士見丘が7年間やってきったWILL入試のような、いわばAO入試のような形で思考力や柔軟性、そして強い意志があるかどうかを求める入試で富士見丘に進学した生徒は非常に伸びている。早慶レベルの大学にもたくさん入っている。
☆いわゆるテスト会の標準化された何をみようとしているのかよくわからない不遜なテスト問題で、開成や麻布の入試問題、富士見丘のWILL入試のようなテストで求めている学力(Tとしよう)を測ることはできない。
☆たまたま多くの母集団が形成され(いやたまたまではないなぁ。マーケットはつくられたのだ)、そこでの順位と合否の相関があるだけなのだ。だからといって、A学力とT学力が一致しているかというと、そんなことはない。模擬テストと入試問題を照合してみれば、一目瞭然である。
☆だから偏差値50の生徒(50に満たない生徒も)の中には、A学力から締め出されているけれど、T学力は十分にもっているという生徒がいるのだ。
☆A学力のルール圏内で締め出されたのに、その圏内にとどまり、そこでストレスを高めてさらに60の学校を受けよう、チャレンジだなんてかけ声は、ときには疑ってかかった方がよい。むしろ、T学力を大切にしてくれるクオリティ・スクールにさっさと進んだ方が、人生は自分にとって成功するのではないだろうか。人と比べて成功するかどうかではなく、自分にとってだし、もしかしたら他者とともにという最高にハッピーな人生を送れるかもしれない。
☆若いイノベータの仲間たちと話をしていると、そう実感するし、何より實吉校長をはじめとする多くの私学人の話を聞いていると、そう感じないではいられない。ともかくA学力圏内の閉塞状況から抜け出すことが大事だし、私学はA学力圏を創造的に破壊しなくてはならない。A学力圏の広がりが、格差社会を支えていることは確かなのだから。
☆ただし、塾の中には、A学力圏内でありながら、T学力を生徒とともに育んでいる講師というのは大いにいるということも確かなのだ。問題は、子ども目線で授業とテストとテキストを作ったことのない経営陣の経営欲がA学力圏を土建国家的に形成しているということなのだ。彼らにとって、子どもたちのT学力は、能書きに過ぎない。そんなことにこだわっていたら儲からないのである。もうそろそろ真実を見たほうがよいと思う。
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