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09年中学入試に向けて[105] 私学人の覚悟[02] 東京女子学園 實吉校長

☆「09年中学入試に向けて[68]東京女子学園の内生的成長続く[03] 」のつづき。東京女子学園の説明会で配布された学校誌「清香(165号)」の巻頭言で、實吉校長は重要な時代認識とそれに基づいた子どもたちの未来を描いている。

☆その一部を引用して紹介しよう。

「私は幸せな時代に生まれた。社会が、私が生きる器を予め用意してくれていたから、大人の語りかけや学校に通うこと学びに向かうことなど、多少の反発や疑問を感じながらも、志しや夢を漠然と考えながら、受動的に生きることが許された。しかし、農工業を中心とした生産社会から消費社会へと社会構造が転換し、第三次・第四次産業が中心となる社会に生きる今の子供たちは、先行きが不透明だと言われる時代に能動的に生きるための力を、そうした人間力をつけていなければ、社会の中に浮遊する一個人として存在するしかなくなってしまうことになる。昨年他界した池田晶子さんが『14歳の君へ』という書の中で、人生の最大の目標は幸福な人生をつかみ取ることだと言っている。東京女子学園のこれからの卒業生には、自分自身の力で能動的な生き方をして欲しいと考えている。」・・・・・・学校では教科学習だけをし、学力がつけばそれで良し、という時代ではない。

☆さらりと生産社会から消費社会への移行が第三次・第四次産業中心の世界を生み出していると語っているが、このような時代認識は、一般的にはまだ早い。品川女子学院でも、せいぜい第三次産業が中心になるとうい社会の枠組みにいるだろう。

☆第四次産業とまでは、日本の経済社会ではまだまだ明確な輪郭は見えていない。欧米では、この産業のことをクリエイティブ・クラスとかディスラプティング・クラス(Disrupting Class)とか呼んでいる。デザインやイノベーション重視の産業ということだろうが、實吉校長は、あえて「第四次産業」と一般的な名称で呼んでいる。

☆おそらくここには、別の名称で置き換えたいという思いがあるからではないだろうか。クリエイティブ・クラスという言葉はリチャード・フロリダという都市工学や社会学の学者が名づけた名称だし、ディスラプティング・クラス(Disrupting Class)という言葉は、クレイトン・クリステンセンというハーバードのビジネス経済学者が名づけた名称で、IT産業の分析から生まれたものだ。

☆いずれも富裕層の話で、格差社会が拡大するベクトルである。ところが、實吉校長は、そうではない、幸せを生み出す社会を支える第四次産業があるのではないかという思いがある。それで、クリエイティブ・クラスやディスラプティング・クラス(Disrupting Class)とは違う産業の名称をあてたいと考えているのではないだろうか。

☆格差社会の拡大は≪官学の系譜≫の延長上にある第四次産業が生み出す。逆にその格差を縮め幸せな社会をつくる第四次産業を生み出すのは≪私学の系譜≫である。だから、實吉校長の言葉の中には、私学人の覚悟が見え隠れするのだ。

☆≪私学の系譜≫が生み出す第四次産業を私は≪クオリティ・クラス≫と呼びたい。先行き不透明な時代に、自分の力で生きていける人材は、≪クオリティ・クラス≫の産業をデザインする。東京女子学園のキャリア教育への取り組みは、そういう私学人實吉校長の覚悟がベースにあるのではないだろうか。

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