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09年中学入試に向けて[99] 明大明治の私学人松田孝志先生

☆明大明治の松田先生は、多くの私学の先生や社会科の教師になった教え子に授業の魂を伝えている。

☆年に幾度も会えないが、会った時には、旬の授業の話で盛り上がる。そこにはいつも成長過程で揺れ動く生徒たちが、自分なりの拠り所、準拠、基準、居場所という言葉で表現される何物かを見つけていく姿がある。

☆そして彼らとともに悩み喜んでいる松田先生の対話の姿もある。

☆中3の生徒たちと、リーマンの話やサブプライム問題の話、パレスチナやイラクの話などをするときに、松田先生は、決して時事問題の知識の整理で終わることはない。それらの問題が生まれる原因について、話し合う。最初のころは、そんなことは専門的で複雑なことで、自分たちではわかるはずがないと不安がる。

☆しかし、いつも買い物に行って体験している例や友人同士の人間関係を例に考えれば、中3だって、根本的なところをストレートに考えられる。複雑な事情や歴史的な条件の違いなどに目を奪われると、結局目先のことしか論じられない。物事の善し悪しの現象が生まれるのはいつもシンプルな基本原理に基づいている。

☆身近な例でストレートにそこに近づくのは、むしろ簡単だ。それを今度は地域や社会や世界にどこまでがんばって敷衍できるかだ。

☆松田先生と話をしていると、いつも思い出すのが内村鑑三と白洲次郎だ。第一高等中学校不敬事件で学校を辞めざるを得なくなった内村鑑三は、学校を変えることはできなかったが、世界を変えることはできた。彼が育てた多くの改革者型リーダーが、世界を変えた。そしてまた私立学校を作り、その≪私学の系譜≫を保守している。

吉田茂の懐刀白洲次郎は、戦後日本を変えた。しかし、彼は鶴川村に隠居し武相荘でカントリージェントルマンとして白洲正子と暮らした。その生き様はしかし私学人である。白洲次郎は在りし日の文芸春秋でこう語っている。

或る一つの政治イデオロギーというものを持っている人と話をするとする。それが資本主義であろうが、社会主義であろうが、何でもいい。ところが個人的に話しているときの、その人の政治思想というものと、演説したり、物を書いたりするときとは違っているのだ。というのは、彼等にとってイデオロギーというものは単なる道具なのだ、自分じゃ思想だと思っている。だからはっきりいえば、彼等には思想がないのだ。

☆ここには、教育や授業において松田先生が語る時と同じ息吹きが吹いている。内村鑑三や白洲次郎のように、私学人松田先生がチェンジするものは、学校ではなく世界である。高村薫氏が「先生は、教室で社会を変えていくことができる。これはすごいことです。」といったのは、こういうことだったのだ。

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