09年クオリティスクールを求めて 05 イノベーション <2>
「09年クオリティスクールを求めて 04 イノベーション」のつづき。
☆イノベーションといっても、いろいろな種類がある。クオリティ―スクールでは、5つの種類のイノベーションを考えている。イノベーションの種類が多いか少ないかは、アイテムスコアには反映させていないが、参考までに一覧表にしておいた。
☆5つのイノベーションとは、
① 思想のイノベーション
② 知のイノベーション
③ コミュニケーションのイノベーション
④ 進路のイノベーション
⑤ ITのイノベーション
☆①の思想のイノベーションとは、ポストモダンの枠組みの中で教育理念を生かすだけではなく、ポストモダンの枠組みの脱構築に理念を適応させているかどうか。栄光や聖光は、基本的にはモダニズムの思想の枠組みに教育理念を適応している。そういう意味では思想のイノベーションを必要としていない。修道会はどうかわからないが、学校法人としてはそうである。
☆ところが、いわゆる男子御三家は、基本的には啓蒙主義的である。富国強兵路線の進化論ではなく、啓蒙主義と進化論の融合に立っている。要するに要素還元主義(あるいは機械論的)ではなく、関係総体主義。東京女子学園の實吉理事長・校長は、100周年誌の巻頭言にラインホルト・ニーバーの祈りを引用しているぐらいだ。
- 神よ、
- 変えることのできるものについて、
- それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
- 変えることのできないものについては、
- それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
- そして、
- 変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
- 識別する知恵を与えたまえ。
☆男子聖学院もまたこの言葉を教育の中で実践している。なんといっても、聖学院の理事長大木教授は、ニーバーの弟子であるのだから。
☆共立女子の校訓の1つ「友愛」は、クーデンホーフ・カレルギーのヨーロッパ合衆国の構想が背景にある。米国一国覇権主義が崩れ、クーデンホーフ・カレルギーの思想がいよいよ重要になってきた。
☆ちなみに、クーデンホーフ・カレルギーの研究者戸澤英典氏は、開成学園出身。
☆知のイノベーションとは、論理的思考だけではなく、批判的思考・創造的思考まで育成できるプログラムがあることを意味する。海城の学級通信、社会科の卒業論文、理科の実験などはその典型。麻布の知のイノベーションである「論集」もあまりにも有名。
☆武相の部活やチーム学習のプログラムも知のイノベーションを実現している。かえつ有明の「サイエンス科」のプログラムは知のイノベーションとして最先端を行っているだろう。横浜山手女子は、IBを本格導入。世界標準の知を大胆に活用。
☆桐光学園の土曜講座「大学訪問授業」は、専門知と創造知の統合を目指しているプログラムで、多くの学校から注目を浴びている破格のプロジェクトでもある(詳細は拙著「名門中学の作り方」でも紹介)。
☆コミュニケーションのイノベーションとは、インストラクショニズムからコンストラクショニズムへシフトしているかどうか。教授法ではなく、生徒自身の学びの方法の構築を意味する。国学院久我山の今井教頭の言葉で言えば、メタ認知ということだろう。
☆白梅学園清修では、英数国は65分授業、午後にはセルフラーニングの時間をとり、部活はなく、エリアコラボレーションというスポーツとアートのアクティビティの時間をとっている。徹底的に対話とディスカッションと禅問答を導入している。
☆海城のPAプログラムやドラマの活用などを感情教育の開発として位置付けているのは他校にはない試みだろう。
☆進路のイノベーションは、東大・早慶・上智のための受験指導を超えたキャリアデザインのことを意味している。聖学院は、オーストラリアのクイーンズランド大学への指定校推薦制度のプログラムを構築している。富士見丘(笹塚)は、積極的にAO入試をめざした思考力・表現力育成プログラムを構築している。
☆ITのイノベーションは、脱パソコンルームを意味する。生徒自身がITの光と闇の両方を了解し、ポジティブな活用方法を使うサポート環境があるわけである。端的なイメージとしては、生徒自身が自ら作ったパワーポイントやビデオでプレゼンテーションをするということである。かえつ有明、白梅学園清修、芝浦工大、芝浦工大柏、武相などは、IT環境も画期的だが、そのような生徒の活動にも注目したい。
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