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2008年12月

時代が求める学校[04] 品川女子学院 脱ポストモダンか?

品川女子学院は、言うまでもなく、注目校。男性原理、集団主義の近代学校システムを改革し、ポストモダンな学校システムにシフトして成功したモデル校である。

☆このシフトは、大きな物語を必要としない個性の時代に巧くマッチングさせることによって達成したのだと思う。

☆金融教育、起業家プログラム、マーケティングプログラム、海外研修プログラムなどの充実はそれを物語っている。

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時代が求める学校[03] 聖学院<02> 入試問題は学校の顔

時代が求める学校[01] 聖学院<01> 入試問題は学校の顔のつづき。

☆国語科の入試問題の傾向の説明は、含蓄があった。出題の範囲というかカテゴリーについては過去問を見ればすぐにわかる説明。重要な点は、出題する文章には聖学院の国語科としてのメッセージがこめられているという指摘だ。

☆たとえば、2008年の一回目の国語では、カメラマン石川文洋さんの文章が掲載されている。戦争と平和をテーマにしている作家である。出題文章の作家選択にもメッセージが込められている。

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2009年は白洲次郎の言動に注目したい

☆白洲次郎の文章が掲載されている「プリンシプルのない日本」を読むと、戦後日本がどういうビジョンで乗り切ろうとしていたか、その雰囲気が伝わってくる。

☆まさにプリンシプルのない日本においてプリンシプルを貫いた人々を私学人と呼んでいるわけだが、白洲次郎もその一人だ。ただし、私学人といえどもその感じ方やものの見方・考え方はみな違う。

☆ただ受益者である国民や市民や生徒のために非利益的に行動し責任を引き受ける受託者としてTrusteeshipを大いに発揮したという点で共通する。私学人とは、そうした私を無にできる学びを続ける人材のことを言うのだ。

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カリスマ英語教師 田尻悟郎先生の授業の意味

☆カリスマ英語教師田尻悟郎先生を知っている人は多いだろう。そのプロフィールはウェブ上で多くの人が語っているし、田尻先生ご自身のサイトにも載っているので、そちらを参照していただきたい。

☆茂木健一郎氏も語っているように、「先生に教えられて学んだものは本物ではない。自分の力でつかんだものしか残らない。教師の仕事は、子ども達の心を開き、やる気をたきつけること。」それが、田尻先生の信念だ。

☆要は学びの好奇心、モチベーションのトリガーが教師の役割ということ。

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時代が求める学校[02] 白梅学園清修のイノベーション

年末の白梅学園清修の学校説明会に200名強の参加者があったようだ。これは画期的だ。新しい。革命的だ。というのも、受験市場では、そうめだっていないにもかかわらず、説明会に参加者が集まるからだ。

☆受験市場で目立たないというのは、いわゆる三大模擬試験で昨年比200%ととか騒がれるているわけではないというような雰囲気のことで、塾の先生方からは注目されている。つまり、大手進学塾やテスト会という大きな利益を生む受験市場ではなく、本当に教育とは何かを考え、日々奮闘している中小塾からの人気があるということを意味する。

☆言い換えると、受験市場ではなく、生徒1人ひとりの考え方や感じ方まで親身に面倒をみることをベースにしている私学市場で人気があるということなのである。

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時代が求める学校[01] 聖学院<01> 入試問題は学校の顔

☆今聖学院は、多くのメディアに注目されている。聖学院のOBが金融界、メディア・出版界で活躍している時代を迎えているということもあるのかもしれない。しかし、何と言っても、聖学院の教育の質を担う教師一人ひとりの存在だろう。創立102年の奥行きの深さということ。

☆この1世紀を超える歴史が、聖学院における教育のミッションと個々の生き方を統合させることができる多くの教師を輩出してきた。そういう実感を抱かせる説明会が、昨日(08年12月23日)行われた。すでに何回も行われてきたのだが、今年最後の説明会のチャンスだったので訪れた。

☆テーマは、入試傾向の説明と見学会。3回に分けて行われていたが、私は最終の組に参加した。平方教務部長によると、すべての回を合わせると、100組ほどの家族が訪れたそうだ。すでに同じテーマの説明会が行われてきたにもかかわらず、しかもクリスマスイブ直前だというのに、熱心な親子の姿に感動。

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09年クオリティスクールを求めて 05 イノベーション <2>

09年クオリティスクールを求めて 04 イノベーション」のつづき。

Innovation_m_co_2☆イノベーションといっても、いろいろな種類がある。クオリティ―スクールでは、5つの種類のイノベーションを考えている。イノベーションの種類が多いか少ないかは、アイテムスコアには反映させていないが、参考までに一覧表にしておいた。

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09年クオリティスクールを求めて 04 イノベーション

09年クオリティスクールを求めて 03」のつづき

☆クオリティスコアを算出するための12のアイテムのうち、3番目「時代の変化への対応力」のスコア4以上の学校をリストアップしてみる。

☆「時代の変化への対応力」とは、要するに「不易流行」の「流行」の部分の度合の問題である。歴史ある私立学校にとって、教育理念を実践してきたシステムを保守することは重要であるが、新しい考え方や感じ方を、教育理念に基づいてどのように受け入れていくのか、変えるものは変え、変えるべきでないものは変えないという選択判断がきちんととれる組織であるかどうかは重要な学校選択ポイントだろう。

☆特にこの10年間は、社会や時代の変化には目を見張るものがあるだろう。イノベーションは避けられない。

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BenesseのVIEW21の紙背

Benesseの戦略が明快に見える VIEW21(12月号)」のつづき。

☆前回「44ページから48ページの「CEPの取り組み」のレポートとそれ以外のページの次元が違うことを理解しているだろうか?」と問うてみたが、このCEPの取り組みのページ数は、全体のおよそ8%を占めている。

☆日本全体で、小学校卒業生が私立中高一貫校に進学する割合にだいたい一致するパーセントである。Benesseとしては、92%の公立学校のサポートもしなければならないが、同時に8%前後の私立中高一貫校のサポートもしなければならない。

☆このサポートの仕方の方法論やビジョンが全く異なるということに気づいているのがさすがである。

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Benesseの戦略が明快に見える VIEW21(12月号)

☆Benesse教育研究開発センターが発行している「VIEW21(12月号)」をいただいた。サイトでも見ることができるので、ぜひご覧いただきたい。学校関係者だけでなく、特に父親に見てもらいたい情報誌である。

☆この冊子のタイトル「VIEW」というのは、教育のビジョンだけではなく、企業や経済のビジョンも見ていくよというものであるからだ。そしておそらくBenesseコーポレーションの戦略の現実化プロセス(進捗状況)のレポートでもあり、「知識基盤社会」における産業としての教育ビジネスの先進的あり方を知る手がかりになるからだ。

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聖学院の高2トリオ 男性の命救う

読売新聞(08年12月16日夕刊)によると、12月13日(土)昼、JR駒込駅で目の不自由な男性が転落。3人の聖学院の高2の生徒が、一瞬の迷いもなく、救出アクション。男性がホームに引き上げられた数十秒後、電車がホームに入ってきた。

☆ホームには利用客が何人もいたが、すぐに救出の行動をとったのは、聖学院の生徒だった。このことについて、読売新聞は新聞メディアの性格上、あえて何も語っていない。あくまで、聖学院の3人の生徒それぞれのパーソナルな正義感と行動力を称えているだけだ。

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品川女子学院の内生的成長始まる 漆校長の選択

今日の日経ビジネス・オンラインで、漆校長は「品川女子学院・漆 紫穂子校長の やる気を高め、人を育てる(秘)メソッド 」の執筆を休載することを宣言しています。

☆そこには印象的な文章があります。

組織は生きています。舵を右に切りすぎれば左に問題が起き、常にバランスを取っていかなければなりません。かつて壁を乗り越えたはずの、同じ根っこの問題が、しばらくすると新型のインフルエンザのように形を変えてやってくることもあります。目標も、ここまでということがありません。今見えている一番高い山をやっと登りきったと思ったら、すぐに次の山が見えてきます。ストレートな道をずっと進んでいけるということはなく、螺旋階段を上りながら少しずつ進化していくような感じです。ある経営者が言っていました。「死んでからゆっくり寝る」と。私も同じ心境です。今、教員一人ひとりに1時間ずつ時間をとってもらい、ヒアリングをしています。

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09年クオリティスクールを求めて 03

09年クオリティスクールを求めて 02」のつづき。

☆二つ目のアイテム「 教師の創造的コミュニケーション能力」のスコアは、生徒と対話する言語構造のレベルに合わせてつけている。

☆基本的に生徒の考えていることや感じていることを受け入れ、生徒自らの新しい考え方や感じ方を引き出すコミュニケーションができると創造的コミュニケーション能力のアイテム・スコアは5である。すべての教師がそうである必要はないが、コアメンバーの教師が創造的コミュニケーションを自在に使っている学校が確かにある。

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09年クオリティスクールを求めて 02

09年クオリティスクールを求めて」のつづき。

☆「自己実現プログラム」といった場合、オプション的なプログラムのことを意味しているのではない。6年間一貫の教育全体に影響を与えているプログラムのことを指している。

☆私学の場合は、教科学習、行事、部活、キャリアデザイン、独自のプログラムがたくさんある。それぞれ教師ががんばっていて、コミュニケーションが充実している。しかし、この段階では自己実現プログラムに発展していない。それぞれがシステム化され、そのシステム自体そのつど振り返りがなされ、改善されている必要がある。

☆さらに、このそれぞれのシステムが連動している必要がある。ここまできて「自己実現プログラム」がやっと見えてくる。あとは組織としてその「自己実現プログラム」を積極的に肯定的にマネジメントしているかどうか。

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09年クオリティスクールを求めて

☆今回の金融危機は、動物化したポストモダン、不透明な時代、価値相対主義の時代、大きな物語の喪失時代、不確実な時代などと呼ばれている現在の政治・経済・文化の流れの必然的な結果だと思う。

☆この流れの大局は明治以来変わっていないという認識に立って、この流れをなんとかしようとし続けているのが≪私学の系譜≫であると考えている。

☆この≪私学の系譜≫にしっかり位置している私立学校のことをクオリティスクール(エクセレントスクールも含む広い意味で使ったり、偏差値50以上で分ける場合もある。座標は分けて使っている)と呼んでいる。

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教育ルネサンスに見る私学の質

教育ルネサンス(読売)を読んでいていつも思うのだが、ここに書かれている教育の先進事例は、丸ごと1つの私学が実践していることばかりであるということだ。

Photo ☆いやいやすべての私学がというのではない。クオリティスクール(エクセレントスクールも含む広い意味)の場合はそうである。たとえば、10月の教育ルネサンスの特集「考える力」で、討論によって読解力を鍛えるというのがあるが、共立女子、女子聖学院、白梅学園清修、麻布など当たり前のように行っているだろう。

図工で教科横断型知性を養っているというのも、神奈川学園、鎌倉女子大、共立女子、聖学院、湘南白百合の美術がすぐに思い浮かぶ。

科学館を活用した理科の授業なんかは、多くの私学もすでにやっているが、中でもかえつ有明の「サイエンス科」の授業での活用の仕方は破格である。

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09年中学入試に向けて[135] 首都圏中学受験志望者動向予想 了

09年中学入試に向けて[134] 首都圏中学受験志望者動向予想 17」のつづき。

☆立教池袋、立教新座、立教女学院は、いずれも応募者増。早慶やMARCHの附属校化の動きにうまく乗っているし、米国聖公会(アメリカ大統領のほとんどがこの出身)のエスタブリッシュな雰囲気も他のMARCHレベルの大学と違うという点もあるかも。

☆特に立教女学院は、サンデーショックの恩恵を浴していることもあるが、最高のキャンパス、教育空間という環境がよいし、パイプオルガンの響くチャペルも3つある。廊下はギャラリーになっているし、研ぎ澄まされたセンスやアーティスティックな感じと聖なる雰囲気は、いかにもリベラルアーツが浸透していると感じさせる。

☆何よりも、このリベラルアーツのプログラムが、見える化されていて、プラグマティックにデザインされているのも優れている。立教大学が早慶と並ぶくらい、大学改革を行いさえすれば、立教女学院の他大学の進学実績云々ということは問題でなくなるのだが・・・。

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09年中学入試に向けて[134] 首都圏中学受験志望者動向予想 17

09年中学入試に向けて[133] 首都圏中学受験志望者動向予想 16」のつづき。

八雲学園の人気上昇は止まらない。来春も応募者増。その理由は、なんといってもコミュニケーションの質。教師と生徒はもちろんのこと、ステークホルダーとのコミュニケーションも実に配慮が行き届いている。相手に勇気と自信と意欲をわかせるその戦術は徹底している。これが人気のセオリーの1つ。

☆しかし、本当の戦略は、姉妹校ケイトスクールとのコラボレーション。大学でいうならば、ハーバード大学やスタンフォード大学とコラボしているようなものである。この重要な戦略に明確に気づいている受験生や保護者はまだまだ少ない。

☆それは徐々に明らかになっていく。ドメスティックな教育は、公立学校に任せ、私学はやはりグローバルでなければというわけだろう。海外研修に行ってますは、公立学校でもできるだろうが、プレップスクールとコラボできるかというとそれは難しいだろう。八雲学園の人気はこれからも続く。

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09年中学入試に向けて[133] 首都圏中学受験志望者動向予想 16

09年中学入試に向けて[132] 首都圏中学受験志望者動向予想 15」のつづき。

☆三輪田学園は、ここのところ生徒募集は増え続けてきた。さすがに来春は、安定期にはいるかもしれない。2010年新校舎完成に向けて、学内全体としては斬新な変化を感じ、盛り上がっているだろうから、その熱は受験生に伝わっているだろう。

☆問題は2011年からだ。西校長の思想的存在が相当大きな学校であるから、新校舎というモノと西校長の思想とをいかに関係づけて教育実践していくのか、若手教員の創意工夫がいよいよ試されるのだと思う。

☆武蔵は、横バイか。同校の入試問題は、ある意味偏差値にとらわれない部分がある。しかし、だからといって、みんながチャレンジしようということになるかというと、そうはならない。独特の自由と学問の雰囲気が、マスウケはしない。不思議な学校である。

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09年中学入試に向けて[132] 首都圏中学受験志望者動向予想 15

09年中学入試に向けて[131] 首都圏中学受験志望者動向予想 14」のつづき

武相の本物の教育が注目され始めている。教育において、組織よりシステムより、何より重要なのは、コミュニケーションである。もちろん組織もシステムも大事であるが、コミュニケーション不足(あるいは押付)・組織硬直・システム強化という学校を選んだら、いかに大学進学実績や偏差値が高くても、未来は幸せかどうかは、言うまでもない。

☆武相の教育には、生徒1人ひとりが、自分の得意な技術や発想を生かせる場がある。そして、多感な思春期の中学3年間1クラス25名体制。いかにコミュニケーション・ベースなのかがよくわかる。

☆習熟度別だとかクラス別だとかいうシステムを組んでいる学校がたくさんあるが、それは1クラスが40名前後であるからである。これは、コミュニケーションをきちんと実行していくには、少人数にする工夫が必要だということを証明している。

☆武相はそこを初めから少人数クラス設定をしているのである。学園生活あらゆるシーンでコミュニケーションが十分になされるシステムなのである。コミュニケーションを補完しなければならないシステムとは違うのだ。コミュニケーションによる信頼形成以外に現代社会の新しいリスクに対応できない。

☆このことに気づいた受験生・保護者は幸せだと思う。

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09年中学入試に向けて[131] 首都圏中学受験志望者動向予想 14

09年中学入試に向けて[130] 首都圏中学受験志望者動向予想 13」のつづき。

☆中村中は、庭園スペースが美しい。清澄庭園を背景に、いや前景に東京湾のかなたを眺望すると、近世と近代と未来が同居している何とも言えぬランドスケープが広がる。中高のスペースとしては、たいへん贅沢というか中村にしかない環境である。

☆このわび、さびと女子生徒の明るい笑顔と管楽器の響きと部活の掛け声が独特の雰囲気を醸し出している。あるとき、中村で出会った保護者がこう語っていた。「息子ではなく娘だったら、絶対通わせていたのに。合格できるかどうかわからないですけど^^)」なぜ女子校にと来たのだろうと思ったが、とにかく感動したということだろう。

☆ここ数年で大人気の中村中。来春もその勢いは止まらない。ここまできたら、大化けするしかないだろう。それはいかにして可能か?その大ヒントは、岡部氏の「The 授業リンク 梅沢先生の報告②」にある。

☆岡部氏のメッセージはある意味暗号化されているから、解釈が必要だ。もし、それができたら、それはすごいことだし、そもそも周りを見回しても、そんな女子校はない。これからが楽しみである。

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09年中学入試に向けて[130] 首都圏中学受験志望者動向予想 13

09年中学入試に向けて[129] 首都圏中学受験志望者動向予想 12」のつづき

☆東京女子学園の来春の生徒募集は増える。人生の最大の目標は幸福な人生をつかみ取ることであり、そのために東京女子学園は、生徒が自分自身の力で能動的な生き方をしていけるように多様なプログラムを創って、支援している。現代社会は、常に崩壊の危機にさらされいやが応でも不安が向こうからやってくる時代だ。そこでいかにして幸福は可能だろうか。現代人の最大の悩みはここだろう。

☆幸せなんてと斜めに見ている幸せな時代は終わり、幸せを真剣に望み、自分の手でつかまねばならぬ時代である。危機を察知する鋭い感覚、問題を解決する知力、互いに信頼の絆を結べる知恵を養う環境選びに、偏差値は全く役に立たない。

☆そのことに気づいた保護者が、東京女子学園に集まるというストーリーでなければ、日本の教育は救われまい。

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09年中学入試に向けて[129] 首都圏中学受験志望者動向予想 12

09年中学入試に向けて[128] 首都圏中学受験志望者動向予想 11」のつづき。

☆西武学園文理は、埼玉エリアの私立中高一貫校の覇者。彫刻の森に、ローマ法王謁見式参列に、大学合格実績伸長に、何でもそろえる迫力教育。応募者は増える。

☆青稜は、成熟期に入り、今後の内生的成長をどうするかにかかっている。応募者は安定している。そういう意味では例年通りかやや減少だが、学内としては大勢に影響はないだろう。

☆世田谷学園は、ここ最近は生徒募集の伸びはそれ程でもなく安定していたが、来春は伸びる。もともと質実剛健で、自己犠牲的精神が養われ、かつ学業もよいという学校。金融恐慌という世界同時的バブルの崩壊の時期、本質路線の教育がやっぱり頼りになるからだ。

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09年中学入試に向けて[128] 首都圏中学受験志望者動向予想 11

09年中学入試に向けて[127] 首都圏中学受験志望者動向予想 10」のつづき。

☆女子美大付属は、微増というところか。美術を通して学ぶ私立中高一貫校だが、やはり美術が好きな生徒が志望しているはずであるからだ。10年後の日本社会は、おそらくデザインの時代であることは間違いないだろう。自動車や家電の生産量を誇るのではなく、人間のライフスタイルにぴったり合い、幸せをサポートしてくれる要素はデザインである。

☆個別にデザインしていくオーダーメイドになれば、それだけ価格は上がる。しかし、それは持ち家の設計に近い価値を有するはず。デザインによる生活革命以外に、大量生産・大量消費・大量移動の20世紀型産業構造をチェンジできない。

☆ユニクロの宣伝はその匂いがする。ただし、商品自体はまだまだ安ければよいというのはあるかもしれない。しかし、次のステージはこのGAPをどうにかするだろう。

☆もっとも、そんなことを考えて、女子美大付属を選択する生徒はいないだろうが、必要がデザインを変えるから、将来への期待はどうしても持ってしまう。

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09年中学入試に向けて[127] 首都圏中学受験志望者動向予想 10

☆「09年中学入試に向けて[126] 首都圏中学受験志望者動向予想 09」のつづき。湘南白百合は、サンデーショックの影響ではなく、教育の質をアップしその広報に尽力している聖園女学院と聖セシリアという同じカトリック学校の影響を受けるようになり、生徒募集の勢いが緩やかになり、安定的な生徒募集になると思う。

☆偏差値的な側面からみると、おそらく50から60未満の生徒の中に、聖園女学院か聖セシリアにシフトする受験生が多くなりつつあるということであり、一方60以上の生徒は湘南白百合に集まっているということだろう。これがカトリック学校のシナジー構造になればよいわけである。

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09年中学入試に向けて[126] 首都圏中学受験志望者動向予想 09

☆「09年中学入試に向けて[125] 首都圏中学受験志望者動向予想 08」のつづき。淑徳巣鴨の来春の生徒募集は増えるだろう。授業のクオリティがまず良い。教師の情熱と創意工夫は生徒の全幅の信頼を得ているし、学校全体としての取り組みがまた良い。教師と生徒のクオリティ・コミュニケーションと生徒の成長を支援するフォロワー・システムがシナジー構造をつくりあげている。5期制とか多様なコース分けというのは、ものすごい先見性なのである。OECD/PISAが掲げているフォーマティブ・アセスメントの実現なのである。淑徳巣鴨の評価システムは、生徒の心身両面をどこまでも伸ばすように組み立てられている。

☆淑徳与野も、淑徳巣鴨と同様、その学祖は長谷川良信である。埼玉エリアにあって、大学進学指導を前面に出さず、浄土宗をベースにした全人教育を実践し続けている。それでいて、いやそれだからこそ実績も良い。埼玉エリアの本物志向の学校選択者が来春集結するだろう。10年前の金融危機同様、目先の成果を追求しているところは、やがて停滞するのは目に見えているからだ。

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09年中学入試に向けて[125] 首都圏中学受験志望者動向予想 08

☆「09年中学入試に向けて[124] 首都圏中学受験志望者動向予想 07」のつづき。芝は、中高時代の男子生徒の成長期をもっともバランスよくサポートしている学校だろう。この日々目まぐるしく乱高下する経済社会、日々変わることが善であると強制されているような社会において突出した人財になることを目標としているわけではない。

☆むしろ、そういう社会にあって眼を輝かせながら心身が疲れ切っている人々や社会をサポートしていく人材の育成がなされている。こういうフォロアーシップこそ、これから求められるリーダー像だろう。芝にとっては、当たり前の教育であるが、世の中にとっては古くて新しいテーマである。

☆流行や表面的意匠に惑わされない目を持った学校選択者に合った学校である。ただ、それがゆえに志望者が爆発的に増えるわけではない。もはや安定的に集まってくる学校であり、それでよいのであろう。

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09年中学入試に向けて[124] 首都圏中学受験志望者動向予想 07

☆「09年中学入試に向けて[123] 首都圏中学受験志望者動向予想 06」のつづき。国学院久我山の女子のSTコースの生徒の知的反応の敏捷さを見せつけられ驚いたことがある。今井教頭の数学の授業というのは、ハイレベルだがわかりやすい。中学の数学の方法論で東大の問題を解決している中3の生徒たちの思考の柔軟性はなかなかのもの。

☆中学入試の時代からその才能を磨かれていたわけではないはずだから、久我山の中高一貫のカリキュラムというか授業の仕掛けというのがいかに巧みであるかがわかる。

☆ここ2年間くらい生徒募集は停滞していたが、来春は増加するだろう。授業の知の仕掛けそのもので、生徒の心身両面の成長を促進できるケースである。声掛かけとかていねいな対話とかそういう心理システムの応用ももちろんあるが、どちらかというと認知科学の応用がベースのような気がする。授業はこうでなくては!授業で生徒が集まる学校になって欲しい。

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09年中学入試に向けて[123] 首都圏中学受験志望者動向予想 06

☆「09年中学入試に向けて[122] 首都圏中学受験志望者動向予想 05」のつづき。吉祥女子は志望者数をガンと伸ばすだろう。ほどよい自由、芸術性もある。東大や医学部の実績もほどよく出ている。地域の環境もなかなかオシャレ。保護者にとっては、吉祥寺カフェも近いし。

☆御三家、豊島岡、鴎友学園女子とならんで、人気がある。この中では、女子学院と鴎友学園女子が、普遍的価値を前面に出して人間力を語るが、他の学校は、日本的道徳は大切にするが宗教理念はそれほど持ち出さない。そうそうカトリックの雙葉の宗教の扱い方はまたそれとも違う。シスターと生徒は同じ空間に互いに別々の存在として位置を占めることができる。

☆暁星は、伝統的エリート・カトリック男子校。世の金融危機は、湖のさざ波のごとき変化に過ぎない然としていられる私立学校。普遍的価値以外に目もくれない。我が道=キリストの道を邁進する世俗離れしているともいえる。それが保護者にとっては安心なのである。いずれにしても大衆ウケはしないので、激増ということはないだろう。

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09年中学入試に向けて[122] 首都圏中学受験志望者動向予想 05

☆「09年中学入試に向けて[121] 首都圏中学受験志望者動向予想 04」のつづき。かえつ有明は、総進の志望者数は昨年なみだが、難進の志望者は増加する見込みだ。

☆高度な英語教育、帰国生の入学、世界標準知の「サイエンス科」の骨太のプログラムが軌道に乗ったからだ。経営陣の構想・運営する教育システムと組織と現場の愛のコミュニケーションがシナジー構造をつくりつつある。

☆ひとえに生徒のためにという先生方の思いが、学内全体に浸透し、よい雰囲気を生み出している。日常の学園生活に教師と生徒の信頼関係で満ちている。それをベースに新構想やリスクマネジメントが行われている。

☆あとは立地の条件が、金融危機でどのようになるかが心配だが、そこはすでにリスク回避の戦略で動いているだろう。学内のリスク回避の最大のコンディションは、信頼コミュニケーション。これは完璧だ。あとは外部環境におけるリスクヘッジ。これはエリア拡大と低学年の保護者への認知拡大という空間戦略と時間戦略だろう。

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09年中学入試に向けて[121] 首都圏中学受験志望者動向予想 04

☆「09年中学入試に向けて[120] 首都圏中学受験志望者動向予想 03」のつづき。大宮開成は、隔年現象で増えるだろうし、特別選抜の新設や大学進学実績右肩上がりは、埼玉エリアのマーケットにはピッタりマッチングするだろう。

☆海城は安定的に微増。もはや大学進学実績が良好かどうかは、志望者にとって気にならにほど安定感がある。人間力育成の新しいプログラムがたいへんおもしろいのだが、まだ受験生・保護者の多くにはその重要性が浸透していないかもしれない。もしこの新たな動きが広まれば、2010年の入試は激増ということもあるかもしれない。

開成は変化がないだろう。センター模試の志望者数の昨対比は減っているが、これは別の問題だと思う。開成入試のマーケットの問題ではないだろう。

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09年中学入試に向けて[120] 首都圏中学受験志望者動向予想 03

☆「09年中学入試に向けて[119] 首都圏中学受験志望者動向予想 02」のつづき。大妻学院グループの大妻、大妻多摩は、全体として生徒募集は増加するだろう。サンデーハッピーの影響もあるが、九段にある大妻は、少し新しい風が吹いている可能性がある。

☆大妻多摩は、大学合格実績は九段の大妻よりよいし、安川瑛子校長は、大妻の元理事長中川秀恭先生のものの見方・考え方を体現しており、教育を要素還元主義ではなく、いろいろな事柄が有機的につながるようにプログラムを組まれる。つまり関係主義的なリベラルアーツを心得ている。それが、大妻多摩が伸びてきた大きな理由なのではないかと思っている。

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09年中学入試に向けて[119] 首都圏中学受験志望者動向予想 02

☆「09年中学入試に向けて[118] 首都圏中学受験志望者動向予想01」のつづき。江戸川取手は、結局変わらぬファン層をつかんでいるのであろう。応募者の増減はそれほど影響ない。東大と医学部進学、道徳の3つの柱は不動。ネット授業や海外研修も充実している。

☆江戸川女子は、AO入試でどれどけ生徒の応募者数を増やせるかがポイントか。非常にわかりやすい学びのシステムができている。各教科の学習、朝テストのシステム、礼法、海外研修、部活などそれぞれ自己完結しているので、生徒が自ら学習計画を組み立てやすい。しかし、その合理的な雰囲気が人気と必ずしもつながらないか。とにかく大学実績はよく生徒にとっても保護者にとっても安心感をもてる学校である。

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09年中学入試に向けて[118] 首都圏中学受験志望者動向予想01

☆中学受験も近づいてきた。各情報センターで倍率速報が出る前に、予想を立ててみる。あくまで独断と偏見だし、エリアは首都圏に限られる。仮説を立てて、実際の結果とのズレを確かめることにより、2010年の入試の動向を予想する準備にしたい。

☆青山学院中等部は、応募者が増える。MARCHグループは、中高一貫を創ったり、新校舎やリフォームをしたりとメディアが取り上げているので、その効果があるか。

☆浅野は、大勢に影響がないとは思うが、神奈川エリアの日能研の勢いいかんということかな。つまりそれによって、受験生の増減はあり。しかし、相変わらず受験生の数は多いだろう。そういう意味では学内の危機意識はそれほどでもないだろう。

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09年中学入試に向けて[117] 私学人の覚悟[03] 實吉ビジョン

☆「09年中学入試に向けて[105] 私学人の覚悟[02] 東京女子学園 實吉校長」のつづき。今年8月中堅現職研修で、實吉幹夫校長は、「私学人として思うこと」と題して講演を行っている。東京女子学園の理事長・校長であると同時に、私学全体のベクトルを示す東京私立中学高等学校協会副会長という立場でも語られた。

☆實吉校長は、私学関係の研修で、いつも奈辺を見定めるかのように遠くを眺めながら、確認することがある。それは「私立学校の取りえる道」という覚悟である。

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09年中学入試に向けて[116] 八雲学園の教育NEXT

☆今年70周年を迎えた八雲学園。毎年、学校説明会の参加者も増加し、誰もが認める人気校になっている。今年9月の第一回目の説明会も、会場の体育館で立ち見が出てしまうほどだった。

☆成功の要因は数えきれないほどあるのだが、何と言っても八雲学園ファンが多いことだろう。学内の教職員や生徒が互いに母校に誇りを持っているのは言うまでもないが、受験生とその保護者、国や自治体の教育関係者、学校を支援するサプライヤー、マスコミなど、いわゆるステークホルダーと理想の教育をつくる感覚を共有しているのが強みだ。

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09年中学入試に向けて[115] 妄想? 塾業界の動き

☆首都圏では、塾業界のM&Aはどんどん進んでいますが、そんな中で、個人塾の重要性が浮上しています。残念ながらM&Aをしようというような中堅・大手塾のように大儲けはできないし、リスクマネジメントにも投資できないでしょう。

☆だから、信用第一という精神面で塾マーケットに参入するしかないのです。しかし、それが私立学校にとっては質の担保になるんですね。一方中堅・大手塾は、広報費や人件費がかさむから、合理化をするわけですよ。これが大学進学実績や偏差値を上げるビジョンをもった私学にはおいしい話なんですが、質は後回しになる。だいたい教育理念なんか言おうものなら、「あんた宗教やめたら」と言われてしまうし。しかし、大手塾と同期をとれば、生徒がそこから流れてくるのも否定できないんですね。

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09年中学入試に向けて[114] 白梅学園清修と品川女子学院

白梅学園清修(以降SS表記)品川女子学院(以降SJと表記)を比較することは、これからの新しい≪私学の系譜≫の動きを知るうえで意味があると思う。

☆どんな観点で比較すればよいだろうか。

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09年中学入試に向けて[113] 白梅学園清修の根っこ

☆「09年中学入試に向けて[111] 白梅学園清修 教育学会入り ♪」のつづき。シンポジウムの中で、新井教授が、柴田副校長のラグビーのメタファーを聞いて、「その話には、ラグビーにおいても言語能力が重要だということが含まれているよ。田嶋さんが、サッカーでも同じようなことを『言語技術が日本のサッカーを変える』という本の中で書いていましたね。」と反応した。

☆そういえば、中村俊輔選手も「察知力」という本の中で言語能力を鍛える作業をノートを通しておこなっていたことを思い出した。スポーツと言語技術はやはり関係があるのだろう。

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09年中学入試に向けて[112] 開成 私学人 生田先生の授業

☆開成学園の生田清人先生は、駒澤大学や早稲田大学でも活躍している。学びの最近接領域で有名なヴィゴツキー研究の第一人者柴田義松先生とも共同研究をしている。

☆今回4冊目の「地理と歴史の授業研究」という冊子を編集。駒澤大学で教育を学ぶ学生の授業計画の中で秀逸なるものを集めている。

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09年中学入試に向けて[111] 白梅学園清修 教育学会入り ♪

☆先週土曜日(08年11月29日)、清泉女子大で「世界新教育学会(WEF)」が開催された。テーマは「確かな学力と豊かな人間性」で、シンポジストは上越教育大学名誉教授新井郁男氏、国立教育政策研究所統括研究官の立田慶裕氏、そして白梅学園清修柴田哲彦副校長。

☆参加者は、この学会の会員の大学の先生方とお弟子さんたちがほとんどだった。つまり、柴田副校長は、アカデミズムの殿堂入りを果たしたのである。

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