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時代が求める学校[07] かえつ有明 新しい共学校

☆今年は、かえつ有明にとって、従来にない新しい共学校をめざして4年めに入る年である。中学と高校同時に共学化したので、実は共学1期生が輩出される年でもある。3年間であっという間に新しい共学校を構えたのだから、これはすごいことである。

☆成果も大いに期待できそうであるから、なおさらなのであるが、なぜそれは可能だったのか。もちろん、経営者のリーダーシップと教職員一人ひとりのフォロアーシップという組織―システム―コミュニケーションの有機的なカップリングがベースにあったからではあるが、改革が成功するには、そのカップリングをなさしめたものが何であったのか?ということである。

☆組織とシステムとコミュニケーションがうまくいくように一丸となろうという旗をふるのは簡単だが、そこに結集する持続的運動を生みだしているものは何か?

☆それは汲めども尽きぬ理念への欲求なのである。これは近視眼的目標を達成したいというような欲求ではない。様々な葛藤もあるだろうが、大きな義への欲求が、それらを無化してしまう。そんな迫力のある魂の存在(それをハビトゥスと呼んだりする)が、創設以来あるからである。

☆つまり建学者嘉悦孝の精神である。「怒るな働け」という理念がそれである。この理念は実はメチャクチャグローバルな覚悟なのである。この5文字に真実が隠れている。

このことに気づいたのは、嘉悦孝(子)が、与謝野晶子と親交があったという事実を知ったときだった。あの俵万智さんでさえもが現代訳したくなるほどの魂がみなぎっているのが与謝野晶子。その晶子に、嘉悦孝の当時の女子教育への情熱を称賛させるほどだったのである。建学者の精神の大きさがわかるシーンではないか。

☆さて、その「怒るな働け」という5文字の背景にある真実であるが、それは今日でもなお理想として掲げつづけ、そこに近づかなくてはならない国際レベルの理念である。

☆現代の国際法秩序において、掲げられてる理念の基礎は、哲学者カントの「永遠平和のために」という小冊子である。このカントの理想をいかに国際組織―国際的システム―グローバルコミュニケーションの有機的秩序として構築できるかが課題なのである。

☆カントは、平和は経済システムによって持続可能になると言っている。男女の格差があるところに平和はない。それは戦争を前提にしているからだ。男女の格差は、経済の格差でもある。女性も経済的に自立することをという強い意志が、与謝野晶子と嘉悦孝の共通した思いだった。

☆その思いで両者は教育を実践し続けたのである。ただ、晶子はアートを生業にすることで自立を支援し、孝は実用主義的自立を支援した。前者は理想=現実の一元論。後者は社会構造の格差ギャップを改革する理想と現実の二元論。

☆それが共学校と女子校の選択の違いとなって現れた。しかし、現代は社会構造の変質が急だ。現在の嘉悦克理事長・校長は、理想=現実の一元論にパラダイム転換を決断したに違いない。永遠平和をいつまでも待ち望んではいられない。現実にしなければならない時代が迫っているからだ。

☆新しい共学校とは、建学者の精神がそのような今の時代において不易流行=出来未来として、脱構築されたということを意味する。時代の流れに押し流されるのではなく、時代の精神を引き受ける覚悟が伝わってくるかえつ有明の変貌なのである。

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