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09年首都圏中学入試[10] 武相の誠実な改革に注目 ②

09年首都圏中学入試[09] 武相の誠実な改革に注目 ①のつづき。

☆科学的なものの見方や複眼思考を大事にする武相。その誠実な構えに従って、改革が着々と進んでいる。

☆その1つは理科の入試システムである。昨年3回にわたって、受験生のために「理科実験教室」を開催。予約制ですべて満席となった。化学分野、生物分野、物理分野に分けて連続ワークショップとなったわけだ。

☆しかし、各分野から選択されたテーマを見ると、実は横断的な思考力、つまり横断知あるいは関係を見つける視点を必要とするものばかりなのだ。毎回出られない受験生のために、分野が違っても抽象的な科学的な思考は共通するように選択されたのだろう。

☆選ばれた3回分のテーマ「ものの燃え方」「食物の消化と酵素」「磁石と電流」は、素材や分野は違うけれども、化学反応、つまり電子レベルの話がベースになっている。最終説明会で、この三回分合冊のサブノートを見ながら説明を聞いていたある父親から「えっ、すごいじゃん」という驚嘆の声が聞こえたが、そういうわけなのだ。

☆そして発想だけではなく、実験する、観察する、図を描く、比較する、整理する、分類する、因果関係の仮説を立てる・・・といった科学的な学びをきちんとするのが、この実験教室の目的だったのである。各テーマについて練習問題と解答まで載っている冊子は、「武相の理科」の結晶態だ。

☆入試の準備を塾任せにするのではなく、学校当局がきちんと提示する。ただ過去問やってきてねなんていうのは無責任なのかもしれない。だから多くの学校では、入試問題の傾向や勉強の仕方を説明会で行っているのではないか。受験市場だけではなく、私学市場を自ら形成しようという責任感が私学の面目躍如だ。武相の理科のように、実験・観察と冊子を合わせたテキストまで作れば、これは私学としては最高ではないだろうか。まさに誠実な改革である。

☆それから国語も算数も、入試問題を解く時間が50分と長くなった。これは合格点としては50%とれればよいのだけれど、やはり考える問題を出題しようという意志が働いたからだ。入試までどんな勉強をしてくるのかというと、作法のトレーニングだけではなく、考えるトレーニングもしてきてほしいというメッセージが込められている。

☆全体としての難易度は若干上がるようであるが、十分に合格点はとれるように配慮されているからご安心をという、これまた誠実な説明に、会場には、一瞬にして安堵の空気が流れた。

☆受験市場では、合格すればよいから、考える問題は捨てて、デキル問題だけやりなさいという指導になると思う。本番はそれでよい。しかし、本番までの準備で、合格点がとれる問題に絞って受験勉強をし続けるような指導は、私学に入学してから困るのである。

☆そんな偏った受験脳を作られたのでは、結局6年間知的なおもしろさを味わえないで終わってしまう。それは苦痛以外の何物でもない。のびのび、知的好奇心でワクワク学園生活を過ごすには、論理脳や創造脳、つまり地アタマを耕しておくことが大事なのである。

☆武相は、そのようなメッセージを問いかけ、教育で実践している。これは受験市場とは友好関係を持ちつつも、染まることはないという知のリスクマネジメントなのである。そしてこの知のリスクマネジメントこそ、建学の精神のメタファー「知の考古学」によって果たされるのである。

☆この「知の考古学」と呼ばれている現代思想は、大学入試の現代国語では1つの常識である。中学受験塾では全くカバーされていない知の領域である。受験生は中学に入ればそれでよいのではない。未来につながっていなければならない。受験脳はそのつながりを切断するおそれがある。だから知のリスクマネジメントなのである。

☆栄光学園も毎春、受験脳を解放するのに四苦八苦しているという話である。

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