09年首都圏中学入試[32] 帰国生入試の広がり
☆中学受験における帰国生入試が拡大しているように思われる。今年の帰国生入試の応募者数がどのくらいになるか全貌はまだ判明していないが、各私立学校が、帰国生に門戸を開く方策を積極的にとっていることから、それはわかる。
☆応募者数が多くなると、帰国生は帰国生入試の情報だけではなく、国内生と同じような学校情報を入手するようになる。海外での帰国生むけの学校情報誌が多数制作されたり、学校説明会の回数や規模もふくらんだりしていることからもわかる。
☆そうなると、帰国生受験は併願などが多様化し、流動性が高くなる。共立女子の渡辺教頭も「今年の帰国生入試は、例年とは違った。応募者も増えたが、今までと違い他校との併願も多い。流動性が高くなった」と。
☆白梅学園清修の教務部長の高添先生は、帰国生が定着しはじめる兆しがあるという。「帰国生にとって、大学進学実績は学校をさがすときの最優先のポイントではない。清修のようにまだ開設して3年のような学校でも、十分に探す対象になっているのですから」と。
☆帰国生のその多くは、英語が堪能である。さまざまな英語の検定のスコアは、大学の推薦の条件をクリアしている。だから、上智やICUに公募推薦ではやばやと進学を決められる。当然ながら海外大学志向も高い。
☆だから、高添先生は、「帰国生にとって、海外で経験してきた自由と自立を大切にする環境、個性を生かせる環境のある学校選びが重要になります。清修を選んでくれる帰国生やその保護者は、特別な帰国生クラスをつくらなくても、ふだんのクラスが、そのまま海外のステキな学校の雰囲気と似ていると感想を言ってくれます」と。
☆白梅学園清修において、どの教科も基礎基本というと、それは知識の記憶というより、考え方の方法論を身につけることだという。自立するには、方法論を自分が自在に使いこなせるようになることだと。
☆だから、授業では方法論を学ぶ。そしてトレーニングは、自らセルフラーニングタイムで。ただし、トレーニングをするとき、適切な問題を選定できるかというと、これは成長を待たねばならない。
☆自分にとって易しい問題ばかりを選んでしまうこともあるし、かなりハードルが高い問題を選んでしまうこともある。その子にとって、ハードルが少し高い問題は何かについては、教師がフォローするシステムになっている。
☆ただし、このマッチングはそう簡単ではない。問題とは問いかけである。生徒がその問題と向かい合い、問いと回答のコミュニケーションができるかどうか、そのプロセスを見なければならない。
☆この点について、清修の鈴木先生は、こう語る。
「ここは難しい。おそらくまだ一般には見える化されていないから、問題が解けるかどうかという結果にどうしても目がいきがちです。その子にとって簡単な問題は、コミュニケーションのプロセスはいらないんですね。アウンの呼吸でできるのですから。しかし、人生は心地よいコミュニケーションばかりではありません。そういうときは試行錯誤の問答が生まれます。問題を解くということは、その体験なんです。ただ、まわりにアウンの呼吸でコミュニケーションできる人があまりに少ないと、不安になるし、モチベーションを燃やせないこともあります。問題のレベルというのも同じですね。自分にとってチャレンジの連続の問題ばかりだと、思考が止まってしまいます。そこのフォローが私たちの役目ですが、私たちも日々試行錯誤です」
☆学習とは、問いの発見と解決の問答の連続。その学習コミュニケーションをサポートできる環境こそ、帰国生が求めていることだが、それは国内生にとっても同じである。日本の未来は教育にあるとよく言われるが、それは、たとえば白梅学園清修のような学校を応援することではないか。
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