09年首都圏中学入試[49] 麻布の国語 公立教師も必見
☆今年の麻布の問題を見た。受験を忘れるような良質の問題だ。相変わらず9,000字ほどの長文で、160字の記述をはじめとする記述問題形式。もっとも、素材文は瀬尾まいこさんの「ゴーストライター」で、最近中学入試でよく出る作者の一人。やはりよく出題されるあさのあつこさん、佐藤多佳子さんと並ぶ、中高生のリアルな人間関係や心情の交差を描く作家。
☆ちょっとマンガやドラマで描かれるユートピア的人間関係で、確かに描写はかつての児童文学とは違い道徳的ではなくリアルなんだけれど、現実味のない画一的な心情のやりとりが気になるが、道徳的でないことはいいことだ。そこが素材文選択において、麻布らしいというところだけれど、昨年の素材文のほうが読解のしがいがあったように個人的には思う。
☆さて、昨年の分析にしたがって、今年も分析してみよう。例によってOECD/PISAのモノサシで分析してみる。
☆まず思考のプロセス。「知識を引き出す①段階→情報を取り出す②段階→文脈からテキストを解釈する③段階→与えられたテキストの文脈にテキスト外の文脈を適切に結びつける④段階」とすると、昨年に比べ、どの段階もバランスよく問われている。
☆しかし、他校と違い③と④の段階の占める割合が高い。今年は、60点満点で合格者の平均は32点ぐらいと予想しているので、文章の内容確認の力だけではなかなか難しい。
☆さらに、それぞれの段階のレベルを分析してみた。「レベル1は情報の確認→レベル2は情報の整理→レベル3は情報の分類・照合→レベル4は論理的思考→レベル5は批判的思考→レベル6は創造的思考」とすると、表のようになった。学習指導要領では、レベル3までしか学ぶチャンスは作られていないが、麻布の問題では、レベル4から6が要求されている。
☆麻布に入学する生徒は、すでに中学入試の学びにおいて、思考過程とレベルの関係はすでに大学以上の水準なのである。もちろん語彙の問題や問題意識については、麻布の6年間の教育の中で内生的に進歩するのだが、まずは考え方のシステムの枠組みが相当高度に鍛えられていることを示唆している。
☆しかし、思考のシステムの枠組みを身につければ、別にセンスだとか天性の何かなどで合格点がとれるわけではない。学べばよいだけだ。ただ、過去問を闇雲にやっているような勉強では誰でもができるようになるというわけにはいかない。
☆入試テクニックなんてバカげたものというか幻想に惑わされるのではなく、人間としての思考のシステムを学ぶ方法があるのだから、そのプログラムを活用すればよいだけのことである。
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