09年首都圏中学入試[65] 学研の中学受験戦略 驚きの学明舎
☆首都圏中学入試はまだまだ続いている。学校選択のものの見方の重要性を感じる時期であるが、同時に新3・4・5年生が、塾選びを考えたり、考え直したりする時期でもある。
☆中学受験と言えば、日能研、サピックス、四谷大塚、早稲田アカデミー、市進とかなるのだろうが、四谷大塚、早稲田アカデミーは、その背景にナガセ(東進)の経営戦略が、ちらつく。
☆塾の生き残りは、合格実績だけではない。経営戦略なき合格実績もありうる。多くの大手進学塾は、その経営戦略や組織の脆弱さで栄枯盛衰の憂き目にあってきた。
☆サピックスも突然現れてきたわけではない。TAPというエリート塾から誕生した。日能研も直接ではないだろうが、一世を風靡したある塾から流れ出ているはずだ。先代の会長の話なのでよくわからないが・・・。
☆ともかく大きかろうが小さかろうが、戦略不全に陥ると、その塾は危ないのは、このご時世だ。四谷大塚にナガセがかかわることで、おそらく内部では激震がはしっているだろうことは想像に難くない。紙媒体ベースの四谷大塚が、日能研の情報戦略に急激に追いついてきているのは、おそらくナガセのマルチ・メディア戦略と上場企業の会計ベースの考え方、つまり成果主義が内部に浸透しているだろう。
☆この状況は、受験市場だけではなく、教育産業全体の再編の動きがあるということを意味している。日能研は、学校法人としての河合塾と部分的提携をしているが、それはおそらく株式会社の性急性に壁を作る本能的な自己防衛だろう。
☆しかし、大きな教育産業は、他にもある。たとえば、ベネッセ、そして学研だ。それこそメディア・ミックス、出版、塾・予備校など幼児から大人までの総合教育産業態である。
☆この2社は、意外にも中学受験のノウハウが蓄積されていない。今のところ画竜点睛を欠いているわけだが、この教育産業再編の時代に、経営戦略的に、この部分を放っておくはずがないのは誰でも予想がつくことだ。
☆ベネッセは、すでに私立中高一貫校にテストや模擬試験で河合塾のように学校をサポートしている。中学受験塾という戦略をとる必要はないかもしれない。
☆一方学研の方は、中学受験専門塾を開設し始めている。その名も「学明舎」。ホームページを見て驚愕。学明舎の講師陣の顔ぶれを見て、第二の・・・かあと。
☆元日能研のメンバーが多いこと多いこと。しかもその中に、めちゃくちゃ優秀な人材がいる。破壊的イノベータで、かつて日能研がITによる情報戦略、今で言えば紙ベースの四谷大塚に破壊的イノベーションで猛攻をしかけ続けていた時に、活躍した人材だ。しかも、当時のITというのは、アイデアだけではだめで、睡眠不足になるぐらいパソコンと格闘しなければならないタフな精神が必要な時代だ。
☆しかし、ウィンドーズ95以来、フラットな組織が世の中に浸透しはじめていた。日能研の組織の中でクリエイティブ・クラスはさっさと外に流れていった時代でもある。氏もその一人だ。
☆しかし、多くは資本といかに結びつくかで悩んだはずだ。ところが今回は、学研が出資しているようだ。なぜなら本部は五反田にある巨大な学研ビルの3階に位置しているのだから。そして、出版部をベースにしている経営は、どこも転換を迫られている。その流れの中での学明舎開設だ。もうあとは想像におまかせする。わかりやすい戦略である。
☆システムは出来上がれば、コンセプトや制作段階の発想はなくてもある程度回る。しかし、戦略転換の時期に遭遇したとき、つまり可能性のオポチュニティに遭遇したとき、そのポテンシャルを喪失していたのでは、戦略不全に陥る。衰退期の始まりである。
☆しかし、「学明舎」はそのポテンシャルと資本が手を結んだのだ。かつて日能研がそのポテンシャルを持った人材の警告をあまり聞かなかったかもしれない。サピックスの資本力を過小評価していたのかもしれない。
☆よって、日能研もサピックスも「学明舎」をあなどることはできまい・・・。そうそう、ここのリーダーシップは≪私学の系譜≫直系である。受験市場の枠に収まりきれないポテンシャルがあることを付け加えておこう。
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