09年首都圏中学入試[72] 開成の国語 解釈×論理
☆今年の開成の国語の分析結果をいつものように表にした。ただし、今までは、OECD/PISAの表現をそのまま使ってきたが、少しわかりにくいのではないかというご指摘を受けたので、表現を変え、キーワードからイメージができるようにしてみた。1つめの表は、思考のプロセス、2つめの表は思考のレベルと思考のプロセスのマトリクス表。
☆これによると、昨年よりやや易しい結果になった。昨年の合格者の平均の予想は56.1%、今年は59.5%。実際の結果は、開成のホームページで公開されているので、参照して欲しい。傾向としては、私の予想(といってもOECD/PISAの分析結果から抽出した平均点の簡単な方程式に拠っているだけ)とそうズレていない。
☆それにしても文章テキストの選択が、メッセージ性が強くて今までの開成の国語とは何かが違う。物語のシーンは、他者の弱みだけではなく、自分の弱みや痛みを感じ取れるリーダーシップ、寛容で受容力のある精神といったものを読解する必要がある。しかもテキストの中に書いてあるものを切り貼り的につなぐだけではなく、きちんと解釈する思考が問われている。
☆ともするとこの解釈は、すでに体験している文脈を結びつけることで解けてしまい、実際には人間関係の体験値や経験値がものをいう問題でもある。ある意味面接をしない分を、ここで担保しているかのようだ。
☆エッセイのテキストにしても、日本人の食文化の中に残る近代以前の文化を見出す、考古学的人類学的な近代批判のメッセージが織り込まれている。当然、問いもそこを狙ってきている。いわゆる学際知(横断知)をこの段階で求めているかのようだ。
☆漢字の書き取りの問題も、次のような文脈を読み取らせている。受験生にとってはたんなる知識問題なのだろうが、同音異義語ばかりだから、外部文脈(要するに、民主主義の文脈)を結びつける思考が本来は必要になる。
争いごとは多くの場合、どちらの言い分にもイチリある。まずは話し合いのシシンを決めてから取り組むべきである。そのうえ、自分の意見をコジせずたがいに認め合いながら、解決策をコウじていくのがよい。
☆このように、今年の開成の国語入試で出題されたテキストに埋め込まれているメッセージは、「リーダーシップ」、「近代批判」、「学際知」、「民主主義」といったキーワードで表現できるわけだが、これはまさに≪私学の系譜≫の思想だ。開成の中で何が起きているのだろうか。
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