09年首都圏中学入試[73] 「日能研 vs サピックス」から見る受験市場
☆これによると、両塾で60%を超えているところは、次のようになった。多い順に並べてみると、
栄光
フェリス女学院
駒場東邦
慶応普通部
麻布
桜蔭
聖光
女子学院
筑駒
雙葉
渋谷教育幕張
浅野
開成
☆いわゆる男女御三家は、武蔵を除きこのグループにはいっている。早稲田アカデミーが、この両塾に参入すると、武蔵も3塾で寡占状態になる。
☆栄光学園が、入学後の保護者や受験生の勉強に対する方法や進路について、受験という枠組みから解き放つのに、長い間躍起となってきたのは、この事態からすれば当然だ。
☆受験市場は、ともすれば、効率主義だし、成果主義だし、個人主義が横行する。その中で、理念を持ち、他者のために自分がいかに役に立つのかを考えて、進路を決めるという私学人を輩出するのが私立学校の役目である。
☆だから、受験市場から入学してきた生徒を私立中高一貫校の6年間で成長させればよいわけであるが、これだけ受験市場が寡占化されてくると、さすがに多様性が危うい。多様性のないところに文化は育たないし、なんといっても創造性が生まれてこない。
☆帰国生入試が1つの重要なポジショニングを獲得しているのは、この文化の多様性を保証するのに役立ちそうだが、実際には両塾が海外にまで受験市場を拡大している。受験市場が市場原理主義で走るのではなく、倫理的な市場として成長することが求められるが、それこそそれは無理な話なのかもしれない。にもかかわらず、あきらめてはならない。
☆①両塾と早稲田アカデミーの中に割って入る強力な塾の出現によって、受験市場における文化の多様性を確保すること。②多くの私立学校が複数回数の一部に口頭試験を組み入れること。③あるいは、国語に400字の作文を導入すること。④保護者や受験生が、偏差値ではなくクオリティスクール(もっとも表で取り扱っている学校はみなクオリティスクールであるのだが・・・)を選択できる選択眼を学ぶこと。⑤私立学校自体が入口の部分で学びの会を設定すること。⑥マスメディアが教育の内容の質の取材をすること。
☆受験市場から私学市場へパラダイム・チェンジするきっかけを、思いつくまま並べてみたが、やはりなかなか難しい。まして、受験市場的要素と私学市場的要素を持っている日能研も、来春はなりふりかまわなくなるだろう。二兎追う余裕はさすがになくなると思う。
☆いわゆる偏差値60以上の学校の中学入試は、来春以降しばらく受験市場一色になるだろう。60未満の学校の中には、その流れに引きずられる学校も出てくる。しかし、そんな中で、私学市場を自ら開いていく学校もある。私学市場を開くとは、文化の多様性を重視するということで、受験市場を排除することではない。寛容に受け入れていくが、あくまで私学市場主体である。横須賀学院、玉川聖学院、八雲学院、女子聖学院、聖学院、武相、横浜女学院などその好例だろう。
☆白梅学園清修のように、量の競争原理ではなく、質の競争原理で乗り切っている学校などは、受験市場から見れば不思議な存在である。しかし、こういう欧米型の学校も日本の私学のなかで希少価値として評価されねばならないのである。
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