09年首都圏中学入試[74] 生徒が集まる構成要素②
☆前回、生徒が集まる構成要素のチャート図を提案し、それに沿って幾つかの学校の今年の生徒募集の成功の理由を考えていこうとした。しかし、10の要素をすべて見ていくには、膨大な時間がかかり、私には力量不足であることがすぐにわかった。どうしたらよいのか、しばらく放置しておいたところ、「杉並区立『和田中』の学校改革」(岩波ブックレット)という冊子を思いだし、読みなおしてみた。
☆すると、苅谷剛彦教授のチームが、4つの要素で分析しているのに気づいた。この要素で分析すれば、私立中高一貫校と公立中高一貫校の生徒募集戦略の比較もできるので、後々有益だと思い。チャートのA・B・Cの中から4つ選び、「広報体制」「プログラム」「進学指導」「メディアとの関係」と名付けた。
☆そして、それぞれの項目のレベルを5段階にし、60点満点でスコア化した。これによって、生徒獲得戦略のパワーをシミュレーションしやすくなった。
☆たとえば、今年の生徒募集で人気だったカリタス、聖園、横浜山手女子について、スコアを付けてみると、カリタスと聖園が同じ51点、横浜山手女子が60点となった。もちろん、横浜山手女子は、まだ改革が始まったばかりで、期待値ではあるが。
☆良し悪しは別にして、藤原氏が校長に就任していた当時からの和田中の生徒数の推移は、169名(2003年)→213名(2005年)→392年(2008年 藤原校長任期終了後)と右肩上がり。上記の「生徒獲得パワーシミュレーション」も52点と高スコアなのである。
☆もちろん、生徒が集まる10の構成要素のうちの4つでの判断であり、あくまで受験市場の枠組みの中での話である。このシミュレーションで私立学校がよいはずはない。私学市場の形成という重要なミッションがあるからである。
☆しかし、私学市場の中に生徒を迎え入れる前に、受験市場が蔓延しているのが世の中というもの。それに対する私立学校の戦略は、意図せずして、藤原革命とある程度同じになってもおかしくない。
☆おそらく藤原革命は、この生徒獲得パワーシミュレーションの枠内で起こるのであって、この枠組みをすでにはみ出している私立学校とは、戦略的差異があるということになるだろうが、まずは受験市場における生徒獲得戦略という視角から見ていく必要がある。
☆というのも、私学助成金の削減を断行して、11年ぶりに大阪府の財政赤字を脱却する見通しの橋下知事の戦略は、他県にも影響を及ぼしかねないし、なんといっても橋下知事の教育事業のブレインの一人に藤原氏がいるからである。
☆良し悪しは別にして、とにもかくにも勝てば官軍という優勝劣敗思想という明治以来変わらない日本の文化的古層=≪官学の系譜≫があるということ。
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