« 09年首都圏中学入試[92] 中村中の次の一手 | トップページ | 09年首都圏中学入試[94] 国公立大学入試の2次試験始まる »

09年首都圏中学入試[93] 今年のサンデーショックの時代精神③

☆昨年末リーマンショック以来、中学入試の話題が多くのメディアでバーッと取り上げられないような気がしている。そのかわり、時代精神は意外と戦後の原点を確認しようとしているかのようだ。

☆今月28日から3回に渡り、NHKドラマスペシャル「白洲次郎」が放送される。なぜ白洲次郎が私立学校に関係するかというと、白洲次郎は日本の教育の中に収まりきれずに、英国で学んでいる。日本の私立学校の多くは、そのモデルをイギリスの名門パブリックスクールに求めている。そういう意味でも白洲次郎は、私学人の一人であるのだが、たんに英国紳士の精神が刷り込まれているというだけではないのだ。

☆戦後の日本の文化や教育の改革は、「二人のシゲル」によって導かれた。象徴天皇と憲法9条、教育基本法、そして講和条約。吉田茂と南原繁の政治家と学者による弁証法が作りだしたといっても過言ではない。

☆表面的には吉田茂は単独講和論だったし、南原繁は全面講和論で、吉田茂が南原繁を「曲学阿世の徒」と非難し、大騒ぎになったほどで、反目しあっているようにみえるが、南原繁の孫である麻布の校長氷上先生によると、互いに尊敬し合ってはいたようだ。

☆なぜだろう。そこに白洲次郎の存在がある。二人のシゲルの調整役をしていたということではない。白洲次郎はもちろん吉田茂の外部ブレインで、むしろ対米戦略で大きな役割を果たしているのだが、問題はなぜ吉田茂と白洲次郎は出会ったかだ。

☆それは若き吉田茂をブレインにしていた樺山愛輔に結びつく。樺山伯爵の娘が正子であり、白洲次郎の父は樺山愛輔の友人である。この樺山伯爵のまわりには小泉信三がいるし、実は新渡戸稲造・内村鑑三の門下生がたくさんいる。

☆小泉信三は現在の天皇の幼き頃の教師役だ。正田美智子さまとの仲介役を果たしている。そのとき協力したのが樺山伯爵とその側近吉田茂だ。戦後の天皇外交を始めたのも吉田茂である。

☆そして吉田茂は、新渡戸稲造・内村鑑三人脈を、実は大量に採用し、戦後日本の舵をとっていたのである。白洲次郎は、直接新渡戸稲造・内村鑑三の門下生ではない。むしろ、吉田茂の直接のブレインで、間接的なブレインは新渡戸稲造・内村鑑三の門下生だったのだろう。その中には前田多門やその娘神谷美恵子がいる。ともかく、その時の新渡戸稲造・内村鑑三門下生のリーダーが南原繁だったのである。

☆それから吉田茂の妻の人脈もある。それがオバマ大統領の娘も通っているワシントンのフレンド・スクール人脈だ。新渡戸稲造もクエーカーだから、当然この人脈につながっている。このプロテスタントの派は、「絶対平和主義」である。憲法9条の成立や象徴天皇の成立に相当貢献したはずである。もちろん今も活動は続いている。

☆この人脈をたどると、まだまだ続くから、このへんにするが、要するに白洲次郎―吉田茂―南原繁―新渡戸稲造・内村鑑三門下生という戦後日本改革人脈が見えてくるのである。NHKスペシャルでそれがどこまで表現されるかはわからない。

☆しかし、白洲次郎が「プリンシプルのない日本」ではダメだと語り、風のように行動し、一方で鶴川村の武相荘で農業を営んだという生き様は私学人そのものである。

|

« 09年首都圏中学入試[92] 中村中の次の一手 | トップページ | 09年首都圏中学入試[94] 国公立大学入試の2次試験始まる »

文化・芸術」カテゴリの記事