伸びる学校[001] 武相
☆今年の武相の中学入試募集は、共学校および大学付属校の流れに苦戦した。中学入試は大衆化したといわれて久しいが、その流れがいつの間にか抗い難い大きさになっていたからだ。しかしこの「中学入試の大衆化」の意味はどれくらいとらえ返されてきたのだろうか。おそらく、私立中学校全体で、このリスクヘッジはなされてこなかったかもしれない。
☆せいぜい中学受験率が20%を超えるか超えないかという量の問題でしか気にされてこなかったのではないか。しかし、大衆化とは、量の問題とわかりやすさ、安心・安全の保障、見通しのよさなどの「安定感」をおそらくは意味し、受験市場の原理では顧客満足度という名で広まっていた一大要素の裏の顔であったのかもしれない・・・。
☆共学志向や大学付属を願うのは、やはりこの「安定感」を求める1つの傾向だろう。「安定感」の対極にあるのは「ストイック」「品格」「清貧」などミッション的雰囲気や求道的雰囲気。
☆もちろん共学校や大学付属でも「ストイック」「品格」「清貧」という要素も兼ね備えているところがある。今年この共学と大学付属の両要素を持っている桜美林やそれを目指している横浜山手は、大人気となった。
☆男子と女子が両方いるというのが、なんとなく自然な安心感を生むのである。大学付属というのが他大学を受験するにしても保険になるのである。
☆しかし、一方で桜美林のプロテスタンティズムはなかなか厳しくキリストの愛への情熱も深い。横浜山手はミッションスクールではないが、中央大学の付属に包摂される条件として、それなりの学力水準が要請される。IBコースへの生半では実現できないチャレンジは、ストイックに映る。
☆安心とチャレンジのバランスが良い学校に人気が集まったというのが09年の中学入試の傾向だったのかもしれない。武相の藤田先生は、そのことにいち早く気づき、来春の生徒獲得戦略をさらにパワーアップしていくことを決めた。
☆たしかに苦戦はしたが、確固たる自信も得た出来事がある。それは入試1回目の手続き者21名のうち20名が入学したということである。しかも成績の良い生徒たちなのである。武相を第一志望にと真剣に選択した1つの証明である。
☆武相のリベラルアーツや求道的かつ教養主義的なスポーツ、中学3年間の少人数教育を評価してくれた受験生とその保護者のグループというのが存在するということは、武相の新たな挑戦へのモチベーションをアップし、勇気を与えてくれる。
☆振り返れば、武相は、今の改革に着手して今年6年目を迎える。大学実績という大衆化した中学入試市場における指標で、大いに注目される時期がいよいよ近付いてきた。ここ数年で結果がでるだろう。
☆そのためには進路指導の破格の創意工夫が現在鋭意努力されているはずである。しかし、今までは中学3年間の改革の表現はしてきたが、高校3年間の努力についてはそれほど積極的には表現してこなかった。
☆そこでここを明快に表現していくことになるのだろう。中高一貫コースでは、中学3年までは、1クラス25人の少人数制。個性と社会性、1人ひとりの学習習慣を育ている。高校では、専門的な知をベースに、特進クラスと進学クラス(そのような名称は特にしてこなかったが、実質あった。そこを明快にすることだと思う)に分けて、進学クラスでは、進路の実現に力を入れ、特進クラスでは進路を一歩進めて探究テーマの自己実現に向けて学習の体制を組み立ててきた。
☆この教育実践のシステム化というか見える化が充実した結果につながる。結局は質の見える化戦略ということになるだろう。やはりあくまで求道的でリベラルアーツな学校である。しかし、大衆化した中学受験市場において要求される実績も結果的に出る。
☆しかも、この不況、徐々に成金主義的欲求体系の行き詰まりを、世界同時的に、それこそ見える化している。大衆化路線から庶民化や市民化路線にシフトする瞬間に立ち会っている。挑戦をせずにわかりやすい世界で生きていくことは経済的には安定しているが、自己実現という意味で安定した心的状況を保てるのだろうか。
☆価値観が様々なのが、私学市場の良さであり、経済的安定も自己実現としての精神的安定も、選択は様々である。だから、1つの価値観に偏ることだけはないだろう。来春以降はどの価値観が選択されるのだろうか。
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