伸びる学校[006] 獨協中学のビジョン①
☆獨協中学は、戦後教育に大きな影響を与えた天野貞祐が校長を務めていた学校である。天野貞祐の人脈や思想的なバックボーンについては、広く深いので筆者の力ではまとめきれない。今後の課題としたい。
☆獨協中学についてもその成立から戦後のパラダイムシフトに至るまでの歴史は非常に豊かな文脈が隠れていて、≪私学の系譜≫を探究するうえで重要な位置を占めている。日本の近代教育の研究においても貴重な存在である。
☆その重要性があまりにも大きすぎて、どこから入っていけばよいのかわからないが、まずは今回、図書室を見せていただいた。
☆すると、やはり読解という点においてすぐれたきめの細かい工夫がされていることに気づいた。たとえば、書籍の帯を、読み手である生徒自身によって創る作業がなされ、それがウインドにずらっと並んでいた。読解は鳥瞰する視点や直感的にとらえることがまずは重要だろう。
☆そして話題になっている出来事を集めたコーナーの設置。時代の息吹を感じることは、読書のトリガーになる。
☆本のディスプレイの仕方がまたおもしろい。表紙が見えるように並べられている。カバーのデザインから本を手に取ってみるということもあるだろう。要は本の編集の視点に合わせて、いろいろな工夫がされているのである。
☆文章とか言葉というものを、コンテンツとそれを表現する構造の仕掛けの両方からとらえていく獨協の本の文化が、図書室の書籍の配列デザインという空間に表れているのではないか。これは、やはり哲学者カントの研究者だった天野貞祐の発想の継承ではないかと思うのは強引だろうか。というよりも、天野貞祐の頭の構造を、図書室の空間で脱構築しているといえるのではないだろうか。
☆書庫にはいるとすぐに目に入るのは、カント全集やアリストテレス全集。これらを今の生徒たちにいきなり読みなさいというのは、学びのプログラム上あまりに唐突である。しかし、哲学者の思考や発想のシステムを学ぶことは、リベラルアーツのプログラムとしては大事である。読書は、このプログラムの古くて新しいシステムである。獨協の創意工夫のすばらしさの1つは、そのシステムの空間化にあった。
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