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09年首都圏中学入試[104] 今年のサンデーショックの時代精神⑨

☆朝日新聞(2009・03・02)で、平野啓一郎さんのインタビューが掲載されていた。平野さんは博多の私立学校明治学園を卒業して、京都大学に進学し、在学中に「日蝕」で芥川賞受賞。なぜか、中世のドミニコ会士の話。もっとも魔女狩りやエクソシストとしてのドミニコ会士で、フランシスコ会士との葛藤が描かれている。不思議な小説だったような記憶がある。

☆最近では「決壊」が話題を呼んだ。小説家として現代の時代精神を反映している。柳沼良太さんによると哲学より文学で社会や人間を分析・表現しようとしたのがリチャード・ローティだという。ローティが読んだら、時代精神を誰よりも巧みに映し出していると感動したかもしれない。

☆その平野さんが、同紙で時代の転機について次のように語っている。

少し前まで、日本は皆が同じ方向を向いていた。たいていの人は仕事が済んで家に帰った後は、テレビを見たり、本を読んだりして時間を過ごし、マスメディアを通じて得られた情報を共有していた。「消費」のグレードをあげていくことで、満足感を見いだすことができた。

転機は2000年ぐらいではないでしょうか。インターネットの普及が最大の要因だと思います。あふれかえる情報で多様化した個々人が、「消費」ではなく「生き方」「やりがい」など目に見えないものに、満足を見いだそうとするようになった。

個人の多様化に、労働形態が追いついていないことも問題のひとつ。時代が変わる中で起きている現象としても考える必要があると思います。

☆「労働形態」を「教育形態」あるいは「学習形態」に置き換えてみる。やはり同じことがいえる。こういう時代の転機を描き切った作品が「決壊」である。

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