09年首都圏中学入試[105] 今年のサンデーショックの時代精神⑩
☆秋田県の教育力を支えている国際教養大学の質について、「教育ルネサンス」(読売新聞2009年3月4日)で掲載されていた。
☆前職のNTS教育研究所のときに、同大学の在学生幾人かと話し合うチャンスがあったが、そのとき3X(explore/exchange/express)の学びの経験を積んでいるなと直感したものだ。これが2007年以降中教審で議論されている「学士力」と同等のものだったのかとは、今日の記事で気づいた。
☆学士力については、やはり2007年の9月10日の読売新聞の記事にわかりやすくまとまっている。その主な項目については以下の通り。
◆「学士力」の主な項目
知識
【異文化の理解】
外国などの文化を理解する
【社会情勢や自然、文化への理解】
人類の文化や社会情勢などを理解する技能
【コミュニケーション能力】
日本語、特定の外国語で読み、書き、聞き、話すことが出来る
【情報活用力】
インターネットなどの多様な情報を適切に使い、活用できる
【論理的思考力】
情報や知識を分析し、表現できる態度
【チームワーク、リーダーシップ】
他者と協力して行動したり、目標実現のために方向性を示せる
【倫理観】
自分の良心や社会のルールに従って、行動できる
【生涯学習力】
卒業後も自ら学習できる創造的思考力
知識、技能、態度を総合的に活用し、問題を解決することができる
☆まとめると、3Xの学習法のことである。MITラボのシーモア・パパート教授やハーバード大学のハワード・ガードナー教授の学習理論にも通じる。
☆問題は、この3Xの学びは、大学に入ってからでよいのかという疑問である。初等中等教育段階でも十分に実施可能な学びである。
☆実際多くの私立学校では、この3X的なプログラムはすでに実施されている。もちろん、公立学校では、総合学習で導入しようとしたが、うまくいっていない。むしろ今度の学習指導要領の改訂で、そこはほとんど無視だろう。
☆だから、初等中等教育では、知識の体系の記憶=3R(読み・書き・そろばん)をやって、高等教育で3Xをやろうという流れになっているのだろう。これは実は一見するとリチャード・ローティの教育論。もっとも似て非なる構想であるが。おそらく文科省は表面的になぞったのではないだろうか。
☆ともあれ、国際教養大学の話に戻ろう。こういう学士力を鍛える実績を積むことによって、企業から極めて評価が高いという。質を評価されるようになったということだ。
☆ただし、
受験生や保護者らの認識は、企業ほどには広がっていない。玄関を入ってすぐに目に飛び込んでくるよう張り出されているのは、国際教養大が上位にランクされた予備校作成の難易度ランキング。「まだまだ、偏差値が高いことを強調しなければならない。新設大学のつらさですよ」。中嶋学長は苦渋をにじませた。
☆という。ここで大事な点は、まだまだ偏差値とか実績が学校選択の重要な指標であるが、企業が、それ以外の指標である教育の質を評価するようになったという点だ。もう一歩でチェンジするのではないかというのは、楽観的に過ぎるか・・・。
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 村田沙耶香さんのNHKインタビュー 母校二松學舍柏で(2017.02.11)
- 「斉藤桂太」麻布のもう一つの知(2015.11.28)
- 2012年Nコン 豊島岡女子 中高両方の部で金賞 関東甲信越ブロックで(2012.10.01)
- 「柴崎俊子祝賀会」 in 中村新館Lady もう一つの私学の系譜(2012.07.24)
- 勇気 「子どものための少年詩集2011」から(2011.11.24)
最近のコメント