09年首都圏中学入試[119] 小学校1年生・2年生のことばの力とイメージ力
☆月に1度、10組以上の小学校1・2年生の子供たちと保護者の方々とワークショップを行うボランティアのチャンスがある。
☆90分の予定だけれど、なんだかんだと2時間になってしまうが、子どもたちは疲れを知らない。イメージ力とそれを表現する工夫に集中する姿にはいつも感動を覚える。
☆ワークショップには子どもも保護者もいっしょにいてよいのだけれど、保護者がいっしょだとその集中している姿、ハワード・ガードナー教授ならフロー状態と呼ぶだろう姿は、なかなかでてこない。ここに家庭の健全なコミュニケーションがある。そういうものなのだ。そして保護者もそれがわかっているから、いつしか90分後に迎えに来るようになる。
☆何をみんなでやるのかというと、その月の旬な動植物やイベントや話題になっていることがテーマの詩や本を読んで、想像したことを絵で描くという表現である。
☆一回完結のワークショップなので、描く道具は、パステルと水彩色鉛筆を使う。パステルは指で直接色を広げられるし、グラデーションやファンタジックな感覚を身体に染み渡らすことができる。
☆水彩鉛筆は、細い線を鉛筆という媒介ツールで表現したり、色を塗る時には線を描く時とは違う使い方を工夫しなければならない。またあとで水に浸した絵筆で色を広げるのだが、今度は色鉛筆という媒介ツールとは使い方が違う。水をどのくらいつけるのかによっても広がりが違う。媒介という質感の多様性を身体化することが言葉の力やイメージ力を豊かにするのである。媒介ツールはもちろん自己であり他者であり、社会である。物質的道具だけではない。
☆文字ベースの情報をイメージに変換し、変換した形を今度は絵という表現に見える化する。そのためにどんな媒介ツールを活用するのかが大事。ええ~っと、それから、これは調べる本がかなり必要なのである。だから家庭ではちょっとできない。学校や図書館などで、図書室を活用しながらやるワークショップなのである。
☆それから、本を読む前に、チーム学習をやる。付箋紙をつかったり、ドラえもんのポケットくじを活用したりして、多くのキーワードを出しあっこする話し合いがある。キーワードを出すための仕掛けがまたおもしろい。パソコンなんかも利用する。マルティメディアは必須だ。そしてそして絵が描き終わったら、ワークショップを通して気づいたことを3点アイデアシートに書く。子どもたちは見事に自分の才能を見出している。
☆キーワードを出し合う→文字を読む(聴く)→絵を描く→図書を調べる→もう一度絵を書きなおすあるいは加える→アイデアシートという流れ。この流れは何の指示もする必要がない。初回説明しただけで、次の回からは、子どもがこの流れをはやくも身体化している。
☆保護者が迎えに来たら、この流れの制作物はファイルしてあるから、それを見ながら簡単にミーティング。自分の子どもの発想のおもしろいところを発見し、保護者がそこのところについて子どもと話し合う場面は家庭の力を感じる。
☆謙虚な保護者は、その発想を微笑みながら子どもと分かち合うし、外国の保護者の誉め方は、実にわかりやすいし、いろいろであるが、自分の子どもの発想を受け入れらる保護者と接するのは心温まる。
☆このワークショップは絵を描くことが好きでないとなかなか参加できないということもあり、アートに寛容な保護者が多いからということもあって、こういうシーンでいっぱいなのだが、子どもの発想を、子どものいる前で、こんなんでよいのかと反論してくる保護者も、ほかの場面ではいる。悲しくなるが、重要なのは、それでもその保護者の子どもはピュアーで、よい子に育つ場合が多い。なぜなのだろう。それは家庭以外に受け入れられる場があるからである。
☆もちろんその場合重要なのは、子ども自身が口うるさいけれど自分のことを愛しているからそうなるんで、しかたがないんだよと思える保護者であれば何の問題もないということなのだ。
☆保護者がいないとき、子どもたちがいかに保護者のことを好きなのかがわかる場面がいっぱいある。それを伝えられるのもこのワークショップの特徴だ。
☆保護者が自分の子どもの才能を見出すことは、保護者自身、自分のことがなかなかわからないのと同じくらいわからないことが多い。こういう第三者の場に参加することは、それなりに意味があるのかもしれないと思う。
☆いずれ3年生になったら、はやくも小学生の進路選択が始まるのだ。自分の子どもの才能が伸ばせる環境を探すためにも、まずはタレントを受け入れるところからはじめるのもよいのではないだろうか。
☆きっちり型の勉強だけでも、のびのび型の体験だけでも、才能は生かされない。たいていは摘まれるか現実化力が育たない。わくわく型の学びの環境設定がポイント。そういう私立中高一貫校を親は探している。
☆それにしても父親がまた熱心であるし、職業もクリエイティブ・クラスが多い。時代は本当に変わるのだ。
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