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09年首都圏中学入試[120] 桐光学園の次の一手 ②

☆桐光学園が創設30年で、エクセレントスクールになった秘密の1つに、灘の担当教師が6年間持ち上がるというシステムを脱構築したということがある。灘の場合は、持ち上がり制ゆえ、6つのカリキュラムあるいは学校が内部にあると言われてきたし、それを誇りにしてきた。

☆しかし、伊奈校長は、「学年のキャラクターが強くなるのではなく、学校全体のキャラクターが強くなることを目標にした」と語る。それはいかにして可能だったのか。

☆持ち上がりのメリットは、各学年の競争にあるのではない。灘はどちらかというと自由競争の学内市場をあえてつくろうとしたと思うが、伊奈校長は、すべての教員が生徒の多感な思春期を伴走できる経験を重視したようだ。その経験を共有できるシステムこそが桐光の教育のベースだと。

☆生徒一人ひとりが殻を破り羽ばたく瞬間を見守る時、そのときは○○教科の教師ではない。そこには、乗り越えようとしている生徒に教師の全人格をかける姿がある。この体験を共有するとは、ここに対話が生まれるということである。

☆同じ思いを、それぞれの切り口で語り、第3の新しい教育の基準を見出していく過程が桐光のクリエイティブ・コミュニケーション・システムなのだろう。だから教師は全人格を生徒のために投ずることができる。そしてこれが同学園の伝統でありハビトゥスなのだ。

☆同じ基準をただただ保守する伝統としてのミーティングは、停滞を生み出す。常に新しいことを生み出す伝統。しかし、ベクトルは変わらない。

☆さて、今年桐光から東大に合格したのは今のところ理Ⅲ1名。ということは来年は、浪人生が合格するから、東大合格の量については心配がない。しかし、物質的な進化を求める先生方はいない。リベラルアーツや教養をあくまで重視する。

☆そうなると、東大生の合格数を出すためだけの政策を打つということは考えられない。どうするのだろうか。ヒントは洗足学園だ。本格的な英語教育と論文編集などのリベラルアーツに力を注いで今年東大合格者4名を出した。

☆それと国学院久我山。東大合格者は3名。中3の数学(特に初等幾何)で東大の数学を解いてしまう発想を養う数学の教師グループがいる。

☆桐光学園は、両校のリソースはすでに十分に持っている。戦略変更ではなく、戦術変更で東大の実績の回復は可能だろう。

☆ただし、私は桐光学園から東大は40人輩出してほしいと考えている。というのも、新しい≪私学の系譜≫だからである。多くの私学の場合、1人建学者の精神の読み返しがベースになるが、桐光学園の場合は、啓蒙思想、道の思想、プラグマティズムの思想、システム論の思想、数理哲学の思想など、世界に通用する多様な考え方で、時代の状況を見据えながらディスカッションして、理念の最適化を作りだすというシステムを構築しているからなのだ。

☆要するに1つの発想から生まれる理念ではなく、多様で多次元の発想から創り出す理念なのである。この理念に基づいて教育実践が行われる。だから保守主義、偏向主義、リスク隠ぺい主義、無気力主義という壁はないのである。

☆東大がまだわたしたちの国のリーダーを輩出する文化的システムの格子の一つであるなら、そこに新たなリーダー観を持った桐光学園のOB・OGがたくさん入り込むのは重要なミッションなのではないだろうか。

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