伸びる学校[014] 獨協中学のビジョン 了
☆獨協中学は、現校長永井伸一先生の時代からビジョンの脱構築が行われ、それに従って教育も実践されているようである。その象徴の一つがビオトープ。夏には蛍が飛ぶまでに生態系は成長している。
☆小さな庭園に自然の循環とそこに太陽光発電の装置をプラスすることで、自然と科学の横断知が生まれる。永井校長は、新サイトでこう語っている。
人類は創造することによって人間独自の文明、生態系を造ってきましたが、これからは地球上に生息するすべての生物との共存のための生態系をつくるべく知恵を使わなければなりません。本校卒業時には21世紀に必要な高学力・高技術に対応できる知識と知恵と共に生存のための哲学を身につけ各人の希望にあった場に進んで欲しいと願っています。
☆この願いがビオトープにもこめられているわけだが、天野貞祐も後輩に語ったスピーチの中でこんなことを語っている。
『万葉集』をつくったり、『源氏物語』を書いたりだね、法隆寺をつくったり、奈良や京都のいろいろな造形美術をつくったりだね、また今度は日本仏教をつくったり、日本儒教をつくったりする、そういう、この、文化の創造力を持った日本民族ですね、我々はその民族なんです。・・・・・・また関東大震災とか、この、無条件降伏とか、そういうことが起こって来ても、たちまちにして回復してしまう。そういう、この、道徳的なエネルギーですよ、そういうものをみんな我々は持った民族なんです。
☆永井校長と天野貞祐はやはり精神的ベースを共有しているわけであるが、永井校長は21世に向かって、天野貞祐のカント的二元論のものの見方を統合して、脱構築しようとしているのが伝わってくる。
☆文化の創造力と道徳的エネルギーは別々のものではなく、科学的に統合されるという考え方ではないかなと。
☆自然と人類の共存は、これは道徳エネルギーなくしてできないし、それは高学力・高技術がなければ実現しえない。その両者が文化の創造力という合力をつくるということではないか。
☆しかし、天野貞祐は、道徳エネルギーと文化の創造を媒介する科学に対してはそれほどの見識がなかった可能性がある。というのも科学を物質文明を生みだす力だと考え批判していたからだ。天野貞祐は哲学者であり、永井校長は科学者である。ここに差異があるのかもしれない。
☆しかし、永井校長は哲学的価値を重視する科学者である。近代の矛盾を明解にしたが、決して解くことはできなかった天野貞祐=カント哲学に挑戦しているともいえる。この挑戦のエネルギーが、獨協学園をどのように発展させていくのか、そして日本の教育をどこまで変容させていくのか、大いに期待したい。
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