伸びる学校[016] 武相の教育の奥深さ
☆9月以降、武相は、受験生のために、ついに理科と社会の画期的な体験授業を公開する。あまりの人気がゆえに、予約制。
☆このことは何を意味するのか。まず9月までにじっくり準備をするということ。これによって、ふだんの授業の準備も日ごろからていねいに準備がなされていることが想像できる。なにせまじめな先生が多く、実態以上の誇張宣伝をしない学校であるから、これはまず間違いない。
☆それからテーマがいいですねえ!分類・整理力、想像力、思考力という科学的ものの見方をストレートに養うものばかり。創設者が科学者だったというその精神がそのまま活かされている。
☆創設者石野瑛は考古学者であり歴史家であるから、自然科学者であると同時に社会科学者であもあったわけで、今回の理科と社会の体験授業の公開はまさにその体現。
☆さらに、理科は実験というロールプレイがあり、社会は先輩がアドバイザーになって支援するというコミュニケーションが導入されている。チームワークを大事にする武相の大きな特徴が染みわたっている。
☆この時期は、小学生のお母さん方とどうしても中学受験の話になるが、やはり偏差値の高低と大学進学実績の話になる。偏差値が低くても、6年間の教育によって、東大にはいるケースもいっぱいあるから、と語っても、わかってはいるのですが・・・と。
☆じゃあ偏差値の高い学校について、どこがいいのか教えてくださいよと逆に質問すると、噂とか雑誌に載っているからとか、想定通り表面的なブランド名。つまり、それぞれの学校の具体的な教育のプロセスを知って、そのすばらしさに共鳴し、他人がなんと言おうと、自分の判断基準を信じて学校を選ぶというところまでにはいたっていない。
☆選択とは外部の情報を参考にしつつも、最終的には自分の内なる基準を信じて決断するわけだが、学校選択においては偏差値とか大学進学実績とか、与えられた(あるいは押し付けられた)基準で決めるケースが多い。これだとせっかく良かれと思って入学しても退学ということになりがちだ。
☆選択とはまずは自分の基準を「信じること」だろう。他者の基準に惑わされ、右顧左眄するようでは、未来は危うい。
☆しかしながら、お母さん方は言う。「説明会に足を運んでも、教育の中身はよくわからないんです」と。それも一理ある。
☆そんなことを思っていたときに、今回の武相の構想公表。これだ!と感じ入った。
P.S.
◇いずれ詳しくとは思っているが、中高一貫校を選ぶ際の、保護者の不安はどういうところにあるのかをまとめてみた。中学入試の段階をEnrollment、中高一貫6年間の教育の中身をProcess、大学進学の段階をOutput、大学卒業後の進路の段階をCareerとして、中高一貫校の教育全体をEPOCとして考えていこうと。
◇もしPの部分がブラックボックスだと、Eの段階で偏差値が高いかどうかという不安に悩むことになるだろう。あるいはOの実績の高低に関心が集中してしまう。Cも大企業とか安定した職業という経済ベースで考えてしまうだろう。
◇やはりPの部分が見える化されていれば、教育を信じる自分の存在に気づくから、ある程度惑わされなくなる。もちろん、そう簡単ではないが、Pの見える化と、EPOC全体のリスクに気配り・目配りし、リスクのマネジメントをする人材育成やシステムづくりの普段の努力が不安を解消し、明るく活発な学園生活を生みだすことになろう。
◇武相の今回の公開授業は、Processの見える化の典型例である。クオリティ・リスク・マネジメントはいかになされているかについては、拙著「名門中学の作り方」(学研新書)を参照されたい。
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