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世界同時不況に対応する今後の学校経営②

Photo ☆前回「世界同時不況に対応する今後の学校経営」で、私立学校の教育理念こそ、このような壁を乗り超える言動のエネルギーであるという旨を述べたが、「逆説の経営学」寺岡寛(税務経理協会2007)という本を読んでいて、なるほどと気付いた点がある。

☆表を見れば、なんだ「弁証法」じゃないか。なんて古臭い考え方を持ち出してくるのだと思われる方が多いだろう。

☆この表はリチャード・パスカルというアメリカのコンサルタントの書いた「逆説のマネジメント」(ダイヤモンド社1991)によるものらしいから、たしかに古いだろう。しかし、91年に書かれていることがポイントなのだ。

☆89年にベルリンの壁が崩壊してから、「弁証法」という言葉は死語になる流れとそれを新しい世界に臨む時のエンジンにする流れに別れたと思われる。前者は英米そして日本である。イギリスはもともtも分析哲学で弁証法そのものは浸透していない。アメリカはニューエコノミーに突入する時代であったから、イデオロギーみたいなものは不要だった。日本は米国に右へならえだから、当然「弁証法」という言葉をすぐに捨てた。

☆それとともに現代思想は大学入試の素材文として機能する流れになり、大きな物語はもはや失われ、個人の正義は微分化していった。

☆ところがOECD/PISAの準備は、着々とカントやヘーゲルの思想を脱構築しながら「弁証法」的思考で進んだ。EUの多くの国はその伝統を捨て去ることはなかった。言うまでもなく、「弁証法」はもともとプラントン、アリストテレスに代表される西洋哲学のルーツである。

☆しかし、この流れは表面的で、実際にはアメリカも「弁証法」はプラグマティズムが吸収しているので、言葉は捨てられても文化遺伝子としては脈々と続いていた。要は、表を見て、例によってわかりやすく理解しなおせば、なんだいかに多角的で柔軟で、ルールの枠内で自由な発想を持ち、実現し続けることが大事なのかということを言っているだけではないかということになる。

☆イノベーションが起こる時、組織や起業はテーゼからアンチテーゼの意識が充満する。しかしことが成功に終わると、ジンテーゼに移行せずに、元のモクアミ。この状態を脱するためにPDCAサイクルがあるということになるのだが、このサイクルがまた形骸化する。

☆ジンテーゼにジャンプアップすることが弁証法的経営であるが、オバマ政権は、ジンテーゼにシフトしようとしているのか、せいぜいアンチテーゼなのか。おそらくプラグマティックな伝統からいえば、前者だろう。一方、麻生政権はおそらくアンチテーゼレベルだろうが。

☆ここで再び≪私学の系譜≫という話になるのだが、ご承知の通り、この系譜は「弁証法」の系譜である。国の教育政策に吸収されることなく、そしてその都度生まれる学内の壁も自ら打ち砕きながらサバイブしてきたのが私学の歴史である。

☆著者の寺岡氏自身、パスカルの表を引用しながら、現状の企業ではあまり顧みられないと語る。なるほど2007年の段階ではそうだったのだろう。91年段階でパスカルの思想が世界の半分に忘却され、2008年9月までは完全に日本では忘れられていた発想なのである。

☆しかし、忘却していたからこの事態は起こっているのではないか。「逆説の経営学」。それは私立学校の経営学に通じるものがあろう。ただし、前者は経済の経営であり、後者は人間学の経営であるが。

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