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伸びる学校[029] 東京女子学園 女学生の系譜

今年5月8日に開催された「夢限大」(私立中学合同説明会のパネルディスカッションで、東京女子学園の卒業生もパネラーとして語ったが、世田谷学園、桐光学園男子部の卒業生とは全く違う雰囲気を放っていた。

☆思想や理念は違っても、男子校の卒業生は、自己を乗り越えるというスタンドポイントに立っていた点では共通していた。

☆ところが、東京女子学園の卒業生は、校長との良好な関係や文化祭の時の教師と生徒たちとの一体感など、他者とのかかわりをいかに可能にするかというスタンドポイントに立って語っていたのだ。

☆また生徒会の主体性と自治性についての話もおもしろかった。東京女子学園の制服のスカートには白線がある。この白線は、たしかに目立つ。山手線の車中でこのスカートを見かけると、東京女子学園の生徒だということがすぐにわかるぐらいだ。

Dsc08428_2 ☆しかし、この白線、内外からファッショナブルではないのではないかという批判も多かった。そこで、生徒会は立ち上がり、この白線をなくすか残すか議論する企画をたて、先生方を説得して、投票するまでこぎつけたそうだ。

☆結果は7票差で、白線を残すことに決定。それ以来、生徒たちは自らの意志にしたがい、白線を快く受け入れたそうだ。

☆だから、リニューアルした制服にも、白線は写真のようにあるのだが、卒業生は重要なことをさりげなく語っていた。

「卒業してみて、あらためて白線の意味がわかりました。それは素直で純粋でピュアな東京女子学園の生徒のこころの象徴です。」

☆素直・純粋・ピュアというキーワードは実は東京女子学園の建学の精神の意味に通じる。1899年高等女学校令によって、明治国家は男子中心主義の学校制度を固めていく。それまでの男性をしのぐ勢いの「女学生」の英知と教養を否定し、良妻賢母一本に絞った女子教育を行っていく。

☆「女学生」は、明治国家にとっては、男性原理をゆるがす精神の先導者だったのである。東京女子学園や嘉悦女子、共立女子などは、そのような女子教育に異議を唱え、明治維新以降に生まれた「女学生」の精神に基づいた私立女子教育を立ち上げたのである。

☆≪私学の系譜≫の中でも最もピュアな系譜が≪女学生の系譜≫なのだ。戦後「赤毛のアン」が東洋英和出身の村岡花子さんによって訳され、大ベストセラーになったのは、ある意味≪女学生の系譜≫の復権を意味していたのかもしれない。これについては、茂木健一郎さんが少し触れている。

☆ともあれ、東京女子学園の白線は、≪私学の系譜≫と≪女学生の系譜≫の二重のシンボルだったのである。

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