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伸びる学校[053] 立教女学院の魅力[1]

7月4日、立教女学院で「授業見学会」が行われた。実によいプログラムだった。2,000人弱は訪れていたのではないだろうか。

P7040145 ☆午前中公開された授業では、「きっちり勤勉型」スタイルの学びの姿を見ることができた。そして午後の部活の公開では、躍動感ある「のびのび発想型」スタイルの学びの姿を目にすることができた。

☆訪れた受験生・保護者は、さらにイングリッシュ庭園風の緑あふれる環境と新校舎の合理性と旧校舎の趣に感動しているようだった。また、清楚な私服姿に、好感も持っていたようだ。廊下を歩いているときに、どうしてもそういう話が耳に入ってきたのだ。

☆「きっちり勤勉型」スタイルは、進学実績に続く学びの姿だ。理系にも力をいれ、他大学への進学指導も積極的に行っていく方針を立教女学院は固めているが、「のびのび発想型」スタイルの活動も今まで通り行っていく。

☆というより後者のリベラルアーツとしての活動がないと立教女学院らしくないだろう。リベラルアーツと進学指導の両立。これができるのには、気概と勇気と高いモチベーションがないとうまくいかない。

Margarets_school_ef ☆この両立には、個々人の意志ややる気に任せているだけだと全体として盛り上がらない。やはりシステム化あるいは見える化されている必要があるのだが、その見える化の方法は本ブログ「私立中高一貫校の4つのタイプで伸びる学校が予想できる」でも、書いた。

☆この図に合わせて、立教女学院の教育環境を図に表してみた。立教女学院は、部活などの「のびのび発想型」スタイルの活動が盛んであるが、部活の種類は違えども、生徒が自分たちで協力して実行していることは共通している。この実行過程こそ「のびのび発想型」の学びである。

P7050154 ☆その学びの過程をプログラムとして見える化したものが「ARE学習」である。AREとは、Ask, Research, Expressの3つの頭文字からとっている。要するに、自ら問いかけ、調べ、編集しプレゼンするという「のびのび発想型」スタイルのプロセスである。この成果は「ARE学習・卒業論文」として発刊されている。

☆たとえば、「水木しげる」の漫画がトリガーになって、民俗学、文化論、子ども論、幸福論という文脈をどんどん増やしていく論文が掲載されているのだが、それはまったくもって圧巻である。この「水木しげる」を「ダンス」に置き換えれば、あの優秀賞をなんども受賞する創作ダンスの世界の豊かな広がりに通じていることが直感できる。

☆しかし、早慶上智クラスに合格するには、こんなAREのような幅広く骨太の受験勉強は必要ないはずだ。それなのに、生徒1人ひとりが、受験勉強のためだけの勉強なんてつまらないという姿勢を見せているのに驚かざるを得ない。

P7040129 ☆この姿勢はどうやってつくられるのだろう。それはキリスト教文化にあることは間違いないだろう。毎朝の礼拝でパイプオルガンの響きに心身を共振させているのだからそれは当り前のようになっている。世界の痛みを感じる大きな心身を育むことこそが重要なのだということを身に染みてわかっているのだろう。

P7050146 ☆その姿勢の表れが、1つは「草創期の人たちの物語」という本に結実している。教育理念の不易流行の歴史観を見える化している書籍だ。在校生やOGはこのすばらしい歴史を捨てることなど想像もできないだろう。「きっちり勤勉型」スタイルだけを遂行するということは、この歴史を捨てるということにつながる。立教女学院の「のびのび発想型」の迫力ある取り組みは永遠に不滅なのだ。

☆そしてもう1つは「戦いのない時代にするために―平和提言集」の編集。これは生徒自身によるものである。かわいらしい冊子として発刊されているが、毎年の作業がまた新たな歴史を紡ぐ。米国聖公会のノーブレス・オブリージュの精神が脈々と流れ続く。

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