2つのエクセレントスクール[08] 東京女学館
☆≪私学の系譜≫として東京女学館は異彩を放つ潜在的なエネルギーを持っているが、そこは封印されたままである。
☆その封印されたエネルギーがあるからこそ、エクセレントスクールとしてのポジションを維持しているわけだから、在校生やOGにとってはそれ以上なにも望むべくもない。
☆しかし、98年・99年ごろ当時の館長渋沢雅英先生は、なぜあれほど改革を推し進めたのか。大学の問題もあっただろうが、東京女学館が、渋沢栄一の精神である経済道徳合一論を引き継ぎ、それを教育の中で展開しようとしたからではないか。
☆当時は、日本は経済の空白10年間といわれている時期。アメリカはニューエコノミーのバブルがはじけようとしていた時期だ。
☆そして、そのベースになった市場原理主義的金融資本主義は昨年末はじけるまで、膨れ上がる一方。雅英館長にとって、その危うさは想定内で、だからこそ「算盤と論語」の財界人であり女学館の実質の創設者渋沢栄一の精神の復権を構想していたのだと思う。
☆大起業家であり、領域横断的でありながら倫理的教養人でもあった。キリスト教国でない日本がキリスト教国である欧米列強と渡り合えたヒントは渋沢栄一にあるのではないかという仮説のもと、学内改革を果たそうとしたに違いない。
☆しかし、女学館の教師にとって、渋沢栄一は沿革の中に登場する人物でしかない。その精神の現代性復権などというアクロバティックな仕掛けは、残念ながら不要。現状の高いポジションを維持するのに、そのようなコストをかけることは合理的でない。
☆現場と渋沢館長の意識のGAPはだいたいそんなところだったのではないか。とにかく野次馬的見地からはそんな見通しだろう。
☆教科横断的な論文編集のプログラムあり、欧米、アジアなど広いエリアとの国際交流プログラムも作っている。進学指導もまずまず。音楽や演劇などのアーティスティックな教育活動も盛んである。
☆世界の大きな動きと中等教育の活動を結び付けるアイデアは、不要なのである。しかし、≪私学の系譜≫としては、中等教育レベルの活動が世界を変える契機になる可能性を持っている。
☆今年限りかもしれないが、社会の方からチェンジしたいと申し出ている。社会が根本から変わるには、倫理や創造的智性が必要だが、今それは公立学校に求めにくい。そこで私立中高一貫校なのだ。そして、東京女学館は最も優れたモデルなのだが・・・。
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