2つのエクセレントスクール[10] 武相の気品
☆前回浅野とサレジオの差異を紹介したときに、理念は括弧にいれて、男子校は結局偏差値と進学実績の差異で選択判断されがちだと書いた。
☆この傾向は神奈川エリアにおいてわりと強い。このことはベクトル図でいうと、選択者は縦軸と横軸の二次元のフィルターでしか選択判断をしないということになる。
☆だから、もう1つのエクセレントスクールである奥行きのベクトルが見えない。桐光学園の分析で発見したように、3次元の奥行きのあるエクセレントスクールを見出せる選択者は、神奈川エリアの男子校ではなく、東京エリアの男子校を選択してしまう。
☆それゆえ、神奈川エリアの男子校を選ぶ選択者の傾向は、偏差値と大学進学実績に偏ってしまいがち。生徒募集において、栄光と聖光の違いが見えなくなってきているのは、両校の実践しているリベラルアーツの質の違いが見えないからだ。
☆大学進学実績では差異がないので、どちらを選ぶかはそれほど問題にならない。今日では、入り易い方を選ぶという偏差値の違いしか問題にならない。ところが中学受験での栄光と聖光の偏差値の差異は、6年間でどうにでもなる。
☆そのうち栄光と聖光の文化の違いが、なくなるだろう。もちろん、そうならないように栄光は入学以降にアカ落としに躍起となる。今のところ大丈夫。
☆しかし、聖光は、リベラルアーツ的なプログラムをどんどん最先端なものにシフトするから、どう見ても意匠は聖光に軍配があがってしまう・・・。
☆しかし、それはリベラルアーツの質の違い、つまり奥行きの質の違いを理解しているかというとそうではない可能性がある。わりとわかりやすさ新しさという視点の方が強いかもしれない。
☆そういう学校選択のフィルター文化の中で、武相は割りを食う。進学実績や偏差値という二次元フィルター(もしかしたら一次元)で見られると、武相の奥行きが見えないのだ。
☆もっとも、それは学校当局はわかっているから、ここ数年進学指導の改革を行っている。だからこそ、今奥行きが見えることが大事なのではないか。
☆多くの私立学校は6年後には、進学実績に関しては課題とならなくなる。そのとき大事なことはリベラルアーツの質なのだ。
☆武相の活発かつ多様なスポーツは、ノーブレス・オブリージュといった英国やフランスの品格ある精神をベースにしている。しかもただ理念的にそう謳っているだけでなく、各スポーツ専用の施設が設置されているのである。こんな学校は他にない。
☆そして考古学者が創設した学校だけあって、その知的活動は「知の考古学」ベースである。一片のきっかけから知が横断的に広がっていく。現状の大学受験勉強は、こんな横断的な知性は不要。断片知識を大量に覚えれば何とかなる。
☆いや東大はそうはいかんだろうといわれるかもしれないが、知識とは単語を意味するのではない。文書丸ごと知識としてみなすことができる。
☆そういう意味では、武相の教育は、選択する保護者に先見性、高い見識、豊かな教養がなければ理解できないかもしれない。もちろん、塾の受験相談の中で、偏差値によってすすめられるケースもあるだろう。しかし、それで入学してきた生徒や保護者は、おそらく目からウロコという感動を得ているに違いない。
P.S.
「知の考古学」ベースというプログラムが可能になる前提は、1クラスの人数が欧米の名門私立学校のように25人だということである。40人以上学級で平気であるというのは、それは軍隊的近代学校の手法。経営とのかねあいで、ここをどうするかはリベラールアーツの質の高い学校は工夫をしているが、武相は中学3年間1学級25人という手法を選んだ。
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