リクルート と 三木清
☆リクルートが出版している「キャリアガイダンス №27」は、タイムリー。中教審などにおける、高校卒業後の就職を学ぶ機関の設置や授業、キャリアガイダンスの強化の流れを鷲づかみにしている。
☆どのページを読んでも個の「生きる力」をいかにサポートするか、そのプログラムやノウハウ満載。ベンチャーキャピタルの大物原丈人氏の語る型破りな人間になれエールは、成功者の価値観を高らかに謳っている。
☆ちょっと偏っているぐらいがちょうどよい編集になっているのがおもしろいが、偏っていると感じたら、ま逆に偏っている本を読んでみるのもおもしろい。いまさらながら「人生論ノート」をおすすめ。
☆キャリアデザインで、三木清のこの書を読もうぜという教師はどれくらいいるのだろうか。それはともかく、こんな一節をご紹介しよう。
成功のモラルはオプティミズムに支えられている。それが人生に対する意義は主としてこのオプティミズムの意義である。オプティミズムの根底には合理主義或いは主知主義がなければならぬ。しかるにオプティミズムがこの方向に洗練された場合、なお何等か成功主義というものが残り得るだろうか。成功主義が非合理主義である場合、彼は恐るべきである。
近代的な冒険心と、合理主義と、オプティミズムと、進歩主義との混合から生まれた最高のものは企業的精神である。古代の人間理想が賢者であり、中世のそれが聖者であったように、近代のそれは企業家であるといい得るであろう。少なくともそのように考えられるべき理由がある。しかるにそれが一般にはそのように純粋に把握されなかったのは近代の拝金主義の結果である。
☆最高の意味での企業家精神は、成功主義者ではないというパラドクスがここにはある。それゆえ、成功主義の企業家精神は贋作である。それゆえ、金融資本主義は崩壊した。
☆なんって言うのは、あまりに現実的ではない。やはりこれも偏っている。でも真実はおそらくこの両極端の間にあるのだろう。そこは、自ら探究しなくてはならない。ここに人生の道の選択の妙があるのではあるまいか。
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