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今秋 神奈川と東京の新しい合同説明会 私学の存在理由を問いかける

☆今秋、興味深い合同説明会の実験が、神奈川と東京で行われるようだ。

☆9月29日藤沢市民会館で、≪校長32名が語る「私学の強さ」(Netty Land講演会)≫が開催される予定

☆財団法人神奈川県立中学校高等学校協会 理事長で聖光学院中学校高等学校校長の工藤誠一先生が、このイベントの巻頭言でこう語っている。

文部科学省や教育委員会を頂点として組織されている公立学校における教育は、その時々の政治によって大きく左右されるという現実があります。現状のような政治的流動性が懸念されている状況下では、ポピュリズム的かつ思いつきの政策によって公教育が混乱することは必至であります。私は、混迷の時代であるからこそ、時代を超えて建学の精神を堅持しつつ一貫した教育方針をとっている私学に、お子さんを通わせることの意義は大きいと確信しております。

☆「ポピュリズム的かつ思いつきの政策によって公教育が混乱することは必至」とは、理念なき政策ということだろう。建学の精神に基づいて教育を実践し続けている私立学校が、ゆるやかな協働のイベントとして、このようなPR活動を開始するのはよいことだ。

☆ただし、財団法人神奈川県立中学校高等学校協会理事長の工藤先生が前面に出ているわりには、すべての神奈川県の私学の校長が参加するわけではない。だから、日能研の子会社NTSを活用したのだろうか。

☆日本の教育全体の問題と照合するとき、今回のイベントは公立VS私立の関係と学校と塾の関係の微妙な位相が実におもしろい。大手塾は企業である限り、その経営はポピュリズムがベースのはず。ポピュリズムとは経済合理主義がベース。売れればそれでよいのだ。

☆ガバメントとカンパニーと私立学校の駆け引きの構造が、教育をつくっている。これが現実だ。裁判員裁判もはじまった。18歳成人の問題も議論されるようになった。東大を中心に科学コミュニケーション論も高まってきている。つまり、市民による選択の基準を創出する時代。今回のイベントは、その基準を創る絶好の機会でもある。

☆それに、32校のうち校長ではなく広報室長や教頭が代わりに出てくる学校が数校ある。学校のマネジメントがトップダウンベースなのかボトムアップベースなのかが見え隠れしている。ここらへんからも将来伸びる私学がどこかも予想できるかもしれない。

10月24日、中村学園に、公立中高一貫校である両国と白鴎、私立の安田学園と会場校中村が合同説明会≪公私協力プロジェクト「4校合同説明会」≫が開催される

☆これはまたあまりに興味深い。神奈川の校長の合同説明会では、この発想は否定的になるはず。なんとも前衛的である。

☆このイベントをどのように評価あるいは批判するかによって、教育観や学校選択観や見識が問われるだろう。

(1)公立と組むなんて私学としては問題ではないか。私学と組むとは中学受験を推奨するようなものだ。

(2)公立中高一貫校や公立の中で1つのメリトクラシーを推進する構造をつくるのに役立ってしまっているし、私立中高一貫校は、社会全体の中で同様の構造を推進する役目を果たしている。その矛盾をどう解決するかを協働してやろうというのは1つの挑戦であると一定の評価ができる。

(3)公立学校に対し、公立中高一貫校が果たす役割として、授業などの教育実践の成果を公開するということ。その成果が私立中高一貫校に比べて甲乙つけがたいということを示せるよいチャンスではないか。

(4)私立中高一貫校も、公立中高一貫校以上の教育実践をしていることを示せるかもしれないし、そうなれば、この協働が、公立学校にもいろいろな質の高い教育実践のノウハウを伝えるきっかけになり、結果的に公立VS私立という闘争ステージから、子どもたちの質の高い教育を提供するにはどうしたらよいのかという協働ステージにシフトできる。

(5)そうはいっても、目先の生徒獲得が問題であり、そのための新しい戦術である点において神奈川の32校の私学校長の説明会と変わりはない。

(6)様々な批判を受けることがわかっていながら、挑戦するその気概に感動する。

☆などなど、いろいろな考え方があるだろう。そういう議論のトリガーになること自体たいへん興味深い。さて、みなさんはどのように受けとめるだろうか。

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