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伸びる学校[060] かえつ有明の成長つづく

☆トリニティ教育研究所フェローの鈴木裕之氏が≪新しい学習プログラムの試み 1 -かえつ有明中高「サイエンス科」≫という記事を連載し始めた。

かえつ有明の「サイエンス科」といえば、国語と理科を論理的に統合し、その論理を体験と結びつけて、思考力と想像力を養う画期的な教育イノベーション。

☆世の中が脱ゆとりと叫び、新学習指導要領でどの教科にも、言葉力を強化するプログラムを作りたいという方向が見え始めたときには、すでにかえつオリジナルの「サイエンス科」という学際的なプログラムが始動していた。そしてそれが新生かえつ有明の飛躍の大きな力になった。

☆それゆえ、「サイエンス科」はしばらくこのままいくのだろうと思っていたが、鈴木氏のブログを読んで、さらに広がりと奥行きがでてきたと感じいった。つまりかえつ有明は教育イノベーションの手を緩めていないということだろう。

☆それにしても、鈴木氏のレポートには、かえつ有明の学びが今後どんなに豊かになっていくか楽しみになるほどのキーワードがちりばめられている。

① 大学進学実績
② リベラルアーツ的
③ 学習スキル
④ 最新の学習理論
⑤ 図書室が教科の枠を越えるためのハブになるという着眼
⑥ リサーチプロジェクトが普段の学習に組み込まれている欧米の学校
⑦ クリティカル・シンキング
⑧ ファシリテート
⑨ 教科横断的な知
⑩ 先進的な学習プログラム

☆今後、これらのキーワードは、1つひとつかえつ有明独自のそれでいて世界標準の文脈がぶらさっがていくのだろう。たとえば、「⑤ 図書室が教科の枠を越えるためのハブになるという着眼」というキーフレーズ。

☆たいていの場合、図書室というのは、情報の拠点だったり、メディアセンターだったりという機能を有している。もちろん、かえつ有明の図書室「ドルフィン」もその機能は備えている。

☆しかし、同校の場合、図書室に集積されている情報や知識を、確認や暗記、あるいは調べるためだけに、利用するのではない。このような利用は、東大の今井康雄教授に言わせれば、言語をたんに記号だと想定しているにすぎない。今井教授は、今後の教育において、言語は多様な文脈の関係性を探究するという意味でのメディアとして学ばねばならないのだと。

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☆だから「かえつ有明」の図書室「ドルフィン」は、言語や情報を「記号からメディア」にチェンジしていく意味での≪メディア・センター≫なのではないだろうか。

☆この関係性のイメージをふくらませ、論理的にきっちり組み立てていくという意味で、もう1つのキーワード、もしかしたらコア・コンピテンスなのかもしれないが、クリティカル・シンキング(CT)が学内で議論されているのだと推察する。

☆同じ言葉も、単なる記号として扱うのか、関係性を探究するメディアとしての意味で捉えるのかでは、教育の土台あるいは枠組みは大きく異なってくるはずだ。

☆成長とは、従来当たり前のものとして使われてきた概念を、日々新たにしていく作業だと思うが、その過程はまさにCTそのものである。自らの殻をぶち破る作業を、はやくもかえつ有明は試みようとしているのではあるまいか。今後注目していきたい。

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