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政権交代の意味 「経済人」と「私学人」に期待がかかる

☆8月30日の衆院選の結果は、国民の欲求通り、政権交代となった。オバマ大統領の「チェンジ」は、バタフライ効果で日本にまで届いた・・・。

☆そういうわけではないだろうが、地球規模で個人の発言や自己決定が影響を与える時代であることは確かなようだ。もちろん、だからといって明治以来の官尊民卑体制・官僚近代国家が変わるというわけでもない。

☆しかし、国家単位ではなく、人間単位で政治経済の流れができるということは、生きるとは何かを多くの人と互いに議論しながら生きる意匠を凝らしていけるチャンスがたくさん生まれることである。

☆まだまだ国家のシステムは変わらないが、その意匠は変わった。意匠というデザイン、つまり型が変われば、フレームも変わり、やがては質も変わるのではないかというクールな感じもするが一方で期待もしてみたい。

☆ところで、日経ビジネスオンライン(2009年9月1日)で、東大大学院准教授の伊藤乾さんが、≪「個人」の力が国を立て直す時代へ――今まさに問われる「有権者の社会的責任」≫という論文を書いている。学際知というか横断知の塊のような異彩を放つ准教授で、ときどき耳を傾けるが、今回もおもしろい。歴史を過去から未来まで縦横無尽に飛び回るその博学な見識にいつも驚くが、今回は経済同友会の設立趣意書を紹介している。

☆いつまでもポストモダンをやっているな!ということだろう。ビジョンやコンセプトや理念なき具体的政策の危うさ(それが今回の金融危機の1つの原因だろう)を訴え、ビジョンと政策の両輪を大事にする精神に立ち戻れということだろう。

☆その精神を戦後直後に設立した経済同友会の精神に見出しているのが、興味深い。哲学者や思想家を出してくるのではなく、経済危機の時代だからこそ、経済人を登場させる巧みなコーディネートが良い。痒いところに手が届く証拠を提出している。説得力というやつだ。

☆そして「経済人」「経済」という言葉を他の言葉に置き換えて読んでみよというヒントを提示している。国家単位ではなく、個人単位で影響を与えらる時代が到来したということは、そこに確かに責任が生じる。

☆そのことはまた他者と共に生き、自らの才能を発揮できる人材づくりが必要だということだろう。とすれば、経済同友会設立趣意書の「経済人」と「経済」を「私学人」と「教育」に置き換えてもよいだろう。

☆戦後という日本国が窮地に陥った時と同じことは、明治維新にも起こっている。そのとき活躍したのは渋沢栄一のような「経済人」であり「私学人」である。

☆設立趣意書の精神は、渋沢栄一の「論語と算盤」の精神にも通じる。ということは、言葉を置き換えてもやはり同じことが言える。

☆そしてこの金融危機。世界の中で日本はどう生き抜くのか、そのビジョンと政策が試されている。官尊民卑が大嫌いだった渋沢栄一の精神は、経済同友会の精神に継承され、私学に引き継がれた。

☆ただ、そんなことは、しばらく多くの場合忘却の彼方だった。政権交代の意味は、この忘却の彼方からの帰還であるのかもしれない。

経済同友会の設立趣旨は、会のサイトで見ることができるが、ここでも紹介しておく。「経済人」を「私学人」に、「経済」を「教育」に置き換えて読んでみるとよいのではないか。

経済同友会設立趣意書(昭和21年4月30日)

日本はいま焦土にひとしい荒廃の中から立ち上ろうとしている。
新しき祖国は人類の厚生と世界文化に寄与するに足る真に民主々義的な平和国家でなければならない。

日本国民は旧き衣を脱ぎ捨て、現在の経済的、道徳的、思想的頽廃、混乱の暴風を乗切って全く新たなる天地を開拓しなければならないのである。これは並々ならぬ独創と理性と意力と愛国の熱情とを要する大事業である。

われわれは経済人として新生日本の構築に全力を捧げたい。而して、日本再建に経済の占める役割は極めて重要である。蓋し経済は日本再建の礎石であるからである。われわれは日本経済の再建を展望しつつ惨たる荒廃の現状を顧みて責務の重大なるを痛感する。

今こそ同志相引いて互に鞭ち脳漿をしぼって我が国経済の再建に総力を傾注すべき秋ではあるまいか。

本会は日本経済の堅実なる再建を標榜する中堅経済人有志の機関であるが、その立場はあくまで経済職能人もしくは経営技術者としての立場を採る。従って政治的立場は無色である。

われわれは何れの政党からも自由であるが、しかし職能人として政策には関与する。而して各政党の経済政策が洵に貧困を極めている現状において、日々の生産に足場を持つ職能人の経験と知識が国の施策に充分生かされなければ日本経済の秩序ある再建は覚束ないと云える。なお、この点については本会は中央経済団体と緊密な連繋を執り充分に協力して行きたい。

本会は他面、会員が相互に啓発し合い切瑳琢磨する教室でもあり、また気楽に親交を温める倶楽部でもある。

☆「経済同友会」ならぬ「教育同友会」の設立を期待したいところだ。

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