共立女子から授業が変わる
☆何かと鳩山家の人々の話題が尽きない、今回の政権交代劇。その中で、鳩山家を支える妻たちの話は興味深い。その妻の中に、春子と薫がいる。春子は鳩山一郎の母であり、薫は一郎の妻である。
☆そして何より二人は歴代の共立女子の理事長だ。鳩山一郎の意志を継いだ由紀夫が掲げる「友愛革命」。EUの父クーデンホーフ・カレルギーの思想でもあり、フランス革命の「自由・平等・博愛」のキーワードにも通じる。
☆「友愛革命」とは、ハーバーマスやルーマン、ガーフィンケルといった社会学者から見れば、コミュニケーション革命である。簡単にいえば官尊民卑的な抑圧的なコミュニケーションをぶっ壊し、公平で論理的で創造的なコミュニケーションへの転回である。
☆このコミュニケーション革命を象徴する「友愛」。実は共立女子の校訓でもある。「共立」そのものが「ともにたつ」「ともだち」という掛け言葉でもある。
☆そういう歴史的な背景がある共立女子だけあって、授業はコミュニケーションを大事にしている。コミュニケーション的数学というのはずいぶん長い間、共立女子で試みられてきた。ソクラテス的産婆術・問答法こそが共立のコミュニケーションであるとも言われてきた。
☆そういう興味深い歴史と鳩山政権のチェンジの波がシンクロしてかどうかはわからないが、共立女子の授業が再び大きく変わろうとしている。
☆社会科の池末先生、国語科の金井先生、理科の桑子先生が、協働して、教科横断知型の授業を展開している。
☆協働するには、教科という枠を統合するなり、突き抜けるなり、包括するなり、とにかく何らかの新しい言語コードが形成されなければならない。教科書やマニュアルの一義的に正確に定義されている物象化された知識用語では、その言語コードを作れない。それではどうしたらよいのだろうか。
☆3人の先生方は、素材を教科書から社会現象の中にシフトする。寺山修司だったか、かつて「本を捨て外に出よ」と言ったのは。作家という創造者は、壁をぶち破るのに、ルーチンから抜けだす。
☆3人の先生方もそうなのだろう。教科勉強から学びの旅に出よと。
☆そんなわけで、まもなく姿を消す201Kの中央線の電車を素材に、生徒と共にインタビューを開始し、収集した資料やデータ、情報を編集、そしてそれを絵本にした。
☆電車通学は、日常のあまり、徐々に201Kが姿を消していっているのに気づかない。かかわった人々にインタビューしているうちに、201kが、意外やエコの技術の集積であったことに気づく。201Kについて様々な関係性をたぐることで、その存在の重要性に気づく過程なのだ。
☆感性や想像性といったものは、この関係性の中にあって、はじめて生まれてくる。しかも、あっ!と思ったものを、自分なりの表現でキャッチすることが、これまた意外と難しいことに気づく。
☆しかし、ここでの教師と生徒のコミュニケーションは、「なんとなく」わかるという霧を明らかにしていく作業だ。大学入試なんてのは、「なんとなく」わかるでもなんとかなる。とにかくできればそれでよいのだ。
☆しかし、コミュニケーションとは本来、失われた関係性の回復と、関係性の深化にあるのではないかと気づく瞬間が、共立女子の授業にはあるのだ。3人の教師の試みは、この瞬間を、教師と生徒とできるだけ共有したいという思いと、多くの教師ともシェアしたいという思いが重なっている。
☆今話題の鳩山論文はクーデンホーフ・カレルギーの次の言葉の引用で結んでいる。
「すべての偉大な歴史的出来事は、ユートピアとして始まり、現実として終わった」、そして「一つの考えがユートピアにとどまるか、現実となるかは、それを信じる人間の数と実行力にかかっている」と。
☆伝達としてのコミュニケーションから関係性探究のコミュニケーションへの転回。共立女子の教師の試みは、ユートピアであるかもしれないが、それを信じる人間の数と実行力が現実にするのである。
☆3人の先生方は、ホームページを立ち上げた。ぜひご覧あれ。
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