男子校・女子校か共学校か?
☆書棚を整理していたら、”the International Boys’ Schools Coalition”のパンフレットが目に入った。95年に開設されたアメリカ拠点の中等教育における男子校のコンソーシアムだ。
☆ポストモダンのながれにのって、世界中の学校教育が共学校が当たり前という風潮になり、男子校や女子校であるシングルスクールが、不易流行を見直し始めたのもこの時期だったのだろう。
☆ なにせ世界はWindows95と共に一気呵成にフラット化、グローバル化した。しかし、一方でおもしろいことに、脳科学の10年と言われるほど、脳の世界の認識が広がり深まった。そこでは、どうも男子女子の脳差があるのではないかという話になった。
☆共学校は、男女のボーダレスを推進し、シングルスクールは男女の脳差による教育環境の工夫を主張した。
☆このコンソーシアムはそういう流れの中で、男子校の優位な点を男子校同士協力してリサーチを開始したのだろう。もちろん、共学校との市場の競争で教育の質を磨くためにでもある。
☆この共学校化傾向は、日本においても全く同じで、私立中高一貫校でシングルスクールの共学校化は増加している。
☆それとともに男子校の苦戦がはっきり表れたのが、今春の入試である。女子校は98年・99年にその兆しが見え、そのときから10年来、女子校の魅力を表現し、さらに開発もしてきたので、共学校との競争に耐えられるところが多い。
☆そこで男子校は、東京でも神奈川エリアでも、協力し合いながら、男子校の魅力を脱構築しようとしている。特に世界同時政権交代が、ポストモダンという物語なき無味乾燥・無色無臭のボーダレス男女役割のパラダイムを崩しにかかっているから、簡単に言うと、形式的平等から実質的平等へシフトしているために、この男子校の脱構築作業は、来春以降1つの潮流をつくるかもしれない。
☆さて、”the International Boys’ Schools Coalition”は、96年に男子校の魅力がどこにあるのか4つのインベントリー(アンケート調査に似ている)を実施することによって調べている。
☆それは、“BRAD AND CORY ; A Study of Middle School Boys(1997年)”という小冊子にまとめられている。10年以上前のリサーチではあるが、すでに今の世界同時的政権交代の必要性が問われ始めた時代であるがゆえに、それなりに参考にはなると思う。
①男子校の生徒は共学校の生徒に比べ、仲間や社会的圧力に屈しない。独立独歩わが道を行く可能性が高い。
②男子校の生徒は、共学校に比べ、「男らしさ」を追求する傾向にある。
③男子校の生徒は、共学校に比べパフォーマンスをコントロールする傾向にある。今風にいえばチャライ演出は人前ではしないということか。
④男子校の生徒は、自分のおかれた環境とトラブルをおこさない。リスペクトしているのである。一方、共学校の生徒は、自分の置かれた環境、つまり学校とトラブルをおかす頻度が高い。学校の問題もあるが、環境からの目線を気にする心的状況がそうするのだろう。
⑤共学校の男子生徒は、男子校に比べ、男女の関係の不安定さに心悩ますことが多い。
⑥男子校の生徒は、共学校に比べ、男女の平等を尊重する。
☆こんな風にまとめられるだろうか。ポストモダン時代は、人の目や女性の目が気になるという大量消費文化の影響を受けていた。こだわりより消費者の満足度が優先していたわけだ。だから、自分の内面性よりどう見られるかが自分の行動の基準になっていた。
☆しかし、社会はどうやら再びこだわりと理念とストーリーを見出したいとおもっている。公共的には無味乾燥で表面的に中立であるが、私人としてはエゴイスティックな人間像から共に生きる個性的な人間が求められてきているのかもしれない。男子校の復権は大ありである。
☆ただし、ここでまた流れや外観に惑わされないようにしなければならない。「男らしさ」は「男臭さ」ではない。世界合衆国のために自らを道具にするような理念を内包している男という意味で、それは女性だって同じなのだ。
☆したがって、共学校でありながら、そういう男子生徒と女子生徒を育成しようという高い理念を持っている共学校もあるのだ。
☆また、そんなことを考えてもいないシングルスクールだってある。
☆やはり学校選択は、外観や数字のみによるのではなく、クオリティの発見によるにこしたことはない。選択基準は自分の内につくらねばということ。このこと自体は普遍=不変であろう。
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