創造的資本主義あるいは公益資本主義と私立学校
☆「世界10月号」(岩波)で、寺島実郎さんが≪ビル・ゲイツの創造的資本主義≫というテーマでショートエッセイを書いている。
☆また、原丈人さんが「公益資本主義は可能か」という対談に出ている。
☆オバマ大統領と日本の政権交代の流れが、理念なき市場経済から新しい市場経済に転換していることを受けての「世界」の編集コンセプトなのだろう。
☆しかし、惜しいと思うのは、それが私立学校の教育につながっていることを見逃していることだ。
☆特集大テーマは「大不況がもたらす産業転換」なのであるから、当然その転換に伴う教育について論じられなければならないはず。
☆ビル・ゲイツの「創造的資本主義」は、昨年氏がダボス会議で講演したときに発表されたものだ。氏自身チャータースクールを応援するなどボランティアや教育に関心を持っている。
☆企業が国に税金を通して社会貢献するだけではなく、利益を他者とシェアするために直接市民に寄付をするとか、そういうことなのだろうが、それよりもすてきなのは、すべての市民がタレントを有しており、クリエイティビティを発揮できるのだというところ。
☆そのための家庭、学校、社会の環境のために企業はあるというのだろう。
☆21世紀に入って、クリエイティブ・ピープル、クリエイティブ・クラス、クリエイティブ・シティ、クリエイティブ・スクール、クリエイティブ・キャピタリズムと「創造」を発揮することの重要性が大きなうねりになっている。
☆「世界」同号でもクリエイティブ・シティとしてストラスブールやフライブルグを例に挙げている記事も掲載されている。
☆自己利益を追求する資本主義から共に生きる資本主義へとはまさに近代官僚国家の教育政策に対して警鐘を鳴らしてきた≪私学の系譜≫の流れそのもの。
☆寺島さんは、何もビル・ゲイツの発想は新しいものではなく、すでに日本の渋沢栄一が「論語と算盤」という著書を書いているように、明治維新当初から日本にあったものだと指摘している。
☆惜しいのは、渋沢栄一が私学人であったことを指摘し忘れていることだ。「論語と算盤」、つまり道徳経済同一説を社会だけではなく、教育にも取り入れていたのだ。
☆そして私立学校では、今日もこのような建学の精神という理念を教育に貫徹させている。産業転換にあたって、私立学校の教育の研究が急務であることの指摘をする見識者がたくさん登場してきて欲しい。
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