2010年度 首都圏私立中高一貫校入試動向[02]
2010年度 首都圏私立中高一貫校入試動向[01]のつづき。
☆11月というのは、私立学校の先生方及び教育産業のスタッフの方々と来春の受験と来春以降の教育について語り合う季節。
☆大所高所から対話することもあるし、大局観と接近戦の情報交換をすることもある。しかし、いずれにしても基本は目下の急場の話から大場に視点が移っていく話である。
☆前回麻布の校長氷上先生の世界観を紹介したが、やはり私学人および私学人をリスペクトしているステークホルダーは、同じように、時代の大きな波をかぶって、現実をひきうけ、他方で、別の位相に立つ視点を失わず、未来に向かって開かれた「小世界」をつくり続けようとしている。
☆20世紀型産業社会から21世紀産業社会にいかに移行していくのかという話になっても、過渡期である以上、その現実に対応していかなくてはならない。
☆その場合、話を聞いていて、過渡期だからこそ、未来への動きをいったん封印して、現実対応でいくのだという選択判断をしている方もいれば、過渡期だからこそ今と未来、細部と全体を見ようとしている方もいる。
☆昔も、今も、未来も、同じ信念で貫き通せると考える方もいる。未来志向をそのまま現実に置き換えようとする大胆不敵な方もいる。
☆私立学校も教育産業も、どの道を選択するかは様々だが、一般に教育産業は、今あるものをいかにアレンジして販売するかという戦術の話が多い。その中で未来志向への企画やアイディアをなんとか現実化しようという若い人材も多い。
☆しかし、教育産業の組織自体は、新しい組織運営ではない。したがって、若手のアイデアを現実化しようという視点がそもそもない場合が多い。それゆえ芽が花開くことは少ないというのが、このデフレ構造に陥っている今日の日本社会ではしかたがないことなのかもしれない。
☆一方、私立学校の中には、現政府の不安定な動きを見据えつつも、中国の台頭が、従来の日米の経済循環をもたらさないことまでリサーチし、独自のサバイバル手法を考案しようとしているところが少なくない。
☆世界動向は日本の経済に影響し、その影響は教育にまで及ぶことを、氷上校長のように感じ取り、考えている私学人がいるのである。
☆海外で研修を行っている私立学校の現場の先生は、為替レートに敏感だし、オバマ大統領の来日・東アジア訪問やEUの初大統領選出の話をどう読むかにも関心を持っている。その背景にどういう歴史法則があるのか、そのような視点は、教科の学びにも影響するのだという。
☆今進んでいる高大接続テストの動きは、その歴史法則からみて、評価できるのかどうか、私学人と教育産業としての企業人とは、大いに議論になっているようだった。
☆平和学習や人権学習も、EUとアメリカ・東アジアの葛藤によって、大きく変化するということも見通し、従来のプログラムでは、新しい時代に対応できないのではないかと語る私学人もいる。
☆このような大局観が、どうして目先の話に関係するのか?それは教育のコンテンツが変わることによる、表現の方法の変化が生まれてくるからである。
☆教育コンテンツが何であれ、すばらしいものだと相手を納得させるのが営業マンだというのは、ホスピタリティやコミュニケーションを大切にしている企業にとっても、あり得ない手法である。
☆しかし、教育産業の組織は古いので、そのようなホスピタリティやコミュニケーションを大事にしない。基本はピラミッドで縦社会である。よって、デフレ経済にあって、盛り上がらない。
☆慧眼の私学人は、そのことをよく見抜いている。再び教育理念に立ち戻り、それを脱構築しながら、クオリティを豊かにしようとしている。クオリティとは固定化した道徳ではない。常に変化する社会や隣人の悩みや状況に応じて、共にサバイブしようという心と解決するスキルをクリエイトする言動こそが質を高めるのである。
☆クオリティが不易流行であるならば、表現も不易流行なのである。変わりつつ不動の地点を追い求める努力こそ≪私学の系譜≫である。
☆来春は、いろいろなところで大きな変化が起こるということなのだろう。
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