私学市場の意義[06]
私学市場の意義[05]のつづき。
☆「中学受験と私学中等教育11月号(2009年11月15日)・編集発行(株)森上教育研究所」には、「09年春早慶上智実績と予想偏差値」の相関グラフと、「09年春MARCH実績と予想偏差値」の相関グラフが掲載されている。
☆これによると、早慶上智の実績と中学受験時の偏差値は相関があるが、MARCH実績と偏差値の相関はそれほどないという結果になっている。
☆受験市場は学歴構造に左右されているので、どうしても早慶上智以上の大学実績の高い学校をよしとする。
☆この格差が大学受験を受験市場と化している。もしどこの大学でもかまわないという状況が現れたら受験市場はすぐに崩壊してしまうだろう。
☆実際、ちょっと目線を世界に移して考えてみれば、フィンランドなど北欧やヨーロッパの多くの国々では、大学の偏差値ランキングというものが存在しない。だからそこでは受験市場は存在しない。しかし、世界の大学の国際ランキングはある。
☆ということは差異があるのだから、なんらかの市場が生まれているはずだ。おそらくそれは私学市場に近いものだと思う。質の競争という市場ができあがっているはずである。
☆日本では、偏差値という指標の格差が存在している以上、受験市場は崩壊しない。さてさてどうするか。
☆私学市場が偏差値を指標のone of themに押し込める方法は3つある。
①入試問題の大改革。麻布や桜蔭のような記述式問題をたくさん出題するようにする。
②早慶上智の実績と中学受験時の偏差値の相関がなくなるようにする。
③模擬試験に代わるマーケティングチャンスを創ること。
☆偏差値マシーンでもある模擬試験には、偏差値に大打撃を与えるほど記述式問題は出題されない。かりに記述式問題を全部捨てても、他の問題ができれば高偏差値を出すことは可能だ。
☆模擬試験では、採点処理の限界があるから、記述式問題はたくさん出題できないのである。だから、記述式問題を多く出題する学校の合否は、偏差値の予想とは大きくズレるときがあるのだ。
☆だから塾側も、記述式問題を多く出題する学校に対し、合否の信頼性が偏差値とズレていると指摘し、セイブしようとする。それに学校側が対応すれば、模擬試験のような入試問題が出題されることになる。
☆逆に言えば、模擬試験のような入試問題を出題している学校は、その教育力の質はあまりよくないかもしれないので、再度シラバスやカリキュラムをチェックした方がよい。
☆それはともあれ、記述式問題を出題するようになれば、その私立学校の教育力はアップするはずだ。記述式問題の採点は、許容をどうするかが非常に重要だが、この判断基準を明確にすることが教育の質向上につながるからである。
☆また、②の「早慶上智の実績と中学受験時の偏差値の相関がなくなるようにする」と、受験市場は私学市場に強く参入できなくなる。私学市場のサポーターとしてのロールプレイをすることになり、教育の質向上が第一になるし、偏差値は学校選びの1つの指標に過ぎなくなるだろう。というよりも意味をなさなくなる。
☆そして、③の「模擬試験に代わるマーケティングチャンス」とは基礎学力検定試験の設置である。これはNPOでなければならない。これはあくまで基礎学力で、難しいことは要求しない。
☆模擬試験とどこが違うのかというと、相対評価ではなく、基準評価である。偏差値評価では全員が偏差値70以上になることは、初めから不可能なのだ。基準評価は、基準を超えればよいのだから、全員が一定の基準を超えることはあり得る。
☆これこそが私学市場である。
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