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伸びる学校[063] 村田学園小石川女子中学校

☆本日(2009年12月5日)、村田学園小石川女子中学校の説明会があった。かつての同僚も説明会に足を運んでおり、これから期待したい学校であるという話も聞きながら参加できた。

☆ほっと安心できるホスピタリティのある説明会。ここにも目立たないけれど小さな野のすみれが咲いているなぁと素直に感じた。

☆小石川女子の目標は「サイエンスレディ」を育てること。だから「論理的思考」の育成の特別なプログラムを1つの柱にしている。そういうと物事を客観視する冷たさを感じるかもしれないが、実はそうではない。

☆科学的思考をノーベル賞受賞者のモノの見方に重ねて説明されているときに、あっと気づいたことがある。それは、科学は、「なぜだろう~」という問いかけから始まるという言葉の中にある。実はこの問いかけは、他者や物事に心が開かれていないと生まれてこないのである。

☆だから、開放的な精神を育てる仕掛けが必要になる。その仕掛けが「コミューンプログラム」というもう一つのプログラムの中に組み込まれている。

☆そしてなんといっても大事なものは好奇心。これは多くの非日常的な体験を通して目覚めるのだが、これもきちんと組み立てられている。日本文化については、茶道や華道など「道体験」ができるし、北軽井沢やオーストラリアなど欧米の異文化体験もプランされている。

☆このように「問いかけ」「開放的な精神」「好奇心」の3つを養うコアプログラムを中心に、各教科が結び付いている。

☆そしてここが肝心なのだが、その結び付きが単純に教科横断型という意味以上のものがあるということなのだ。教科横断型という場合、たいていはモザイク的なつながりで終わる。

☆「環境」とか「平和」とか共通のテーマを各教科で扱っていますよという程度なのである。

☆ところが、小石川女子の場合、そのような表層的組み合わせではなく、学びの内的構造をつないでいるである。

☆英語ならばコミュニケーション能力という内的な構造とコミューンプログラムが結合している。このつながりが、英語の授業をさらに生き生きさせるだろうし、オーストラリア修学旅行でも大いに役立つだろう。

☆このコミュニケーション能力は当然心の問題だけではなく、論理的な言葉の働きも育成するわけだから、コアプログラムと共鳴するし、言葉を通して考える力を養う国語科にもつながる。この考える力は、言うまでもなく論理的思考なのだから、数学にも結び付いていく。

☆この連鎖がイメージできる説明会だし、配布されたDATA BOOKには様々なマインドマップが表現されており、そのつながりをなぞることができるのである。

☆つまり、小石川女子の教師は、学びの構造を見える化する議論を、学内で展開していることがわかるのである。

☆ただ、問題は表現が奥ゆかしすぎる。現実を誇張する説明会も困ったものだが、現実を縮小して伝えるのももったいない話だ。

☆もっとも、生徒1人ひとりの才能に合わせた「ちょうど」の教育がゆえに、どうしても超謙虚にならざるを得ないのだろうか。ビゴツキーだったら「最近接領域」を大切にした学びの環境を形成していると評しただろうに。

☆それにしても、コミューンプログラムの諸富祥彦教授とのジョイントはおもしろい。エンカウンタープログラムで開放的精神を拓くには、最高の教授ではあるが、カール・ロジャーズの研究家でもある。

☆きれいだなと感じ入った瞬間に、いっせいにあの美しい花びらを放つ桜のような心理学なのだ。内に秘めたラディカルな精神性・・・。

☆伊藤校長は、生徒1人ひとりの個性の開花を、桜の花にたとえていた。同じ桜でも春に咲く桜だけではなく、秋にも冬にも咲く桜の種類があるのだと、それぞれの桜の美しい写真をパワーポイントで映し出して語られたが、それは美の背景にある豊かな潜在エネルギーの話でもあったのかもしれない。

☆ところで、小石川女子は、大学進学実績については、G-MARCHクラスを目標にするとさらりと説明したが、なんて勇気のいることだろう。普通は無理でも早慶上智を目指しますとスローガンを掲げるのだが。これでは一部の塾は積極的にススメないだろう。

☆しかし、そこがある意味よいところではないか。受験市場に頼らず、私学市場の中で教育の質向上を目指していきますというビジョンが明快に伝わるからだ。

☆能力主義ではなく才能主義。これからのクリエイティブ経済社会にあって、どちらがサバイブするときに有効なのか。学校選択ギリギリのところで悩むポイントである。

☆しかし、MARCHの附属校を選ぶなら、小石川女子を選ぶほうが、将来はMARCHの選択の幅が広がる可能性が大かもしれない。つまり、かりに法政の付属校を選べば、どうしても法政大に進む可能性が大になるだろうが、小石川女子の場合は、そのレベルの大学はどこでも選べるわけだからだ。しかも立教を除いて、他の附属校は、共学校である。

☆MARCHクラスの附属校をねらっている女子で、実は女子校がよいのだがと思っている場合、小石川女子の選択の可能性もあるのではないか。無理なく、学びを思いきり楽しみながら、そしてMARCHへ。さらに自分の個性を生かした職業に進むというキャリアデザインもあるのではないか。

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