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私学市場の意義[08]

☆ある教育企業のスタッフから教員研修の一部を頼まれ、打合せをしているときに、「本間さんが、大学進学実績向上に取り組むのは私学として当然だというのには、驚きました」と言われた。

☆そのスタッフの方は、決して仕事上は前面に出さないが、内には実存主義的価値観を秘めている人材で、ある意味教養を前提に企画を立てているのが興味深い。

☆私学の研修プログラムは、やはり教養が前提条件としてないと外部のプログラムはなかなか受け入れられないのだろうと、納得した。

☆それにしても、研修と言えば、今はやりの「見える化」「形式知化」。マイケル・ポランニーの「暗黙知」の用語を使った野中郁次郎さんらの「ナレッジ・マネジメント」の知識経営論がベース。

☆2000年前後から、ネットワーク上でナレッジ・マネジメントのアプリケーションソフトが開発販売されていたが、今では研修でも活用されているようだ。

☆しかし、この「暗黙知から形式知」へという概念は、あくまで野中さん流の概念で、マイケル・ポランニーとはまったく違う概念であるとも言われている。

☆野中流儀の「暗黙知」は、情報がタコつぼ状態になっているから、共有しようねというような出発点になりがち。ポランニー流儀の暗黙知は整理や形式知を意識している段階ではパワフルではない。それが自在に意識しないで稼働するような知になっていることが大事だから出発できるような気がする。

☆そんな話をやりとりしながら、研修に臨めるのは、やはり出会ったスタッフの知的力量である。そしてその力量は教養に支えられている。

☆この教員研修も私学市場の1つだ。塾が教員研修の企画を持ち込むこともある。ビジネスコンサルタントが教員研修の企画を持ち込むこともある。教育産業が企画を持ち込むこともある。

☆塾の場合は、生徒獲得戦略ベースの企画になることが多い。ビジネスコンサルタントや教育産業の場合は、キャリアデザイン・ベースや顧客満足ベースの企画になることが多い。

☆大手教育産業は3つくらいが有望なのだが、その中の一社は、私立学校を丁寧にリサーチし、教育理念という、一般に塾や企業が心底からは理解しようとは思わない点も深く考えるスタッフをそろえている可能性がある。

☆このように各私立学校の理念を文言以上に掘り下げて考える教育産業と私学市場がカップリングすることは、私学の使命の面目躍如であろう。

☆まさに内村鑑三の「後世への最大遺物」を残す行為ではないだろうか。

☆そんなわけで、教養に支えられた受験勉強はあり得るわけであって、そういう受験勉強を推進し、大学進学実績を向上させることは私学として当然ではないかというのが私の思いである。

☆昨今はキャリアデザインとしての進路指導が提唱されている。私もそれで良いと思うが、そのキャリアデザインも教養に支えられていなければ、技術獲得のためだけの受験勉強になってしまう。現状の日本の経済や企業の状況から、それだけではサバイブできない可能性がある・・・。

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