私学市場の意義[09]
私学市場の意義[08]のつづき。
☆ある私立学校の学校関係者評価委員会のミーティングに参加する機会を得た。教育基本法が改正されて以来、学習指導要領も大きく変わっているが、学校評価についても、文科省主導で、次々と進んでいる。
☆学校自身による自己評価はすでに行われているし、いよいよ学校関係者、要するにステークホルダーによる評価が行われる準備が進んでいる。その次は第三者評価機関と進むのだろうか。
☆公立学校などですでに公開しているところがあるので、ホームページなどを閲覧すると、なんと作業的評価の多いことかと驚いてしまうが、まあできるところから始めようということなのだろう。
☆私立学校の場合、入試という受験市場による評価がすでになされているので、今さらなぜ学校関係者評価なのかと、大きな疑問も残るが、入試は決して受験市場だけではなく私学市場という次元も混在しているので、この私学市場の中における質の評価を向上しようという意味で、学校関係者評価を活用しようという私立学校もある。
☆しかし、そうなると評価項目がかなり理想的になり、いまここで実行できたかどうかという評価になると、いつまでも永遠の課題で終わってしまい、開放的な気持ちが生まれてこない。
☆生徒1人ひとりの生きざまを寝る暇など度外視して行っている、自分たちの気概と信念をどうして他者から評価されなければならないのかというジレンマも一方であるのも否めない。
☆しかし、それでも国家の設定した理念なき学力達成をさせたかどうかの評価では満足できないのであって、そういう意味では独自の評価項目が、私立学校の独自の姿を浮き彫りにする、つまり逆照射することになるのであればやろうと努力している学校もある。
☆いわば私学市場の維持のために学校関係者評価を活用しようというのだ。実際、評価者として選ばれている学校関係評価者は、卒業生の親、近隣の住人などで、学校の授業やイベントを見学したり、先生方の話をヒアリングしたりしている。
☆すると評価のために調べることによって、かえって学校のことがよくわかるというのだ。卒業生の親でも、実際にはここまで深く教育されていたとは気付かなかったとか、近隣への配慮がこんなにもたいへんだったのかということが理解できたとか、評価が逆に高まるのである。
☆それは口コミで評判が広がることにつながる。結局評価される学校の教育の質が高ければ、学校関係者評価は、口コミでその良さが広まっていくという効果があるのである。第三者評価機関の場合は、客観的になり、比較されランキングが出されそうで、そう簡単に歓迎されるとは思わないが、学校関係者評価は、評価者の見識によっては、良き成果を得られるだろう。そしてこれは私学市場を良質にしていくことになろう。
☆特に教育理念に基づいた質の高い教育への希求は、目の前の生徒募集の危機感からますます求められるようになっている。
☆すでに東京では私立幼稚園と小学校の受験が終わっているが、世田谷区などでは、どこの幼稚園も小学校も、生徒応募者数自体は増えていないし、むしろ減っている。ただ、中学受験に比べ、園数や小学校数が少ないので、定員割れを起こしているところが多いなどということはない。
☆ただ、ここまで経済的影響が出てきているのかという実感はあるという。幼稚園の場合は、保育所の数が増え、この不景気の中夫婦共働きも増加しているから、幼稚園から保育所へのシフトが生まれているのだろう。
☆来春ひとり中学受験だけは活況を帯びているという景気情況でもないだろうから、受験市場も私学市場も危機感は高まるだろう。ただ、受験市場は量の競争、私学市場は質の競争である。経済環境がダウンサイズに傾く時、サバイブ戦略は質の向上しかないのはい言うまでもない。
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