さらに飛躍する学校
☆先日23日、神奈川エリアのある私立学校を訪れた。草創期をものすごいスピードで通過し、はやくも成熟期に到達している学校であるため、停滞におちいらないようにリスクマネジメントの手腕を発揮している。
☆そういう見識のある経営陣の層が厚いし、創設者の教育バックボーンを深いところで感じ取りながら脱構築しようという知恵が稼働しているのもおもしろい。
☆しかし、なんといっても成熟期の次は、油断していると衰退期→死滅期に進むのは簡単だ。そうならにように内生的成長の仕掛けを工夫しているのが伝わってきた。
☆学校の内生的成長は、一部のメンバーだけががんばっていても、実は難しい。学内の教職員全員が成長の渦に巻き込まれていかねばならないし、その渦をつくるコラボレーションをしなければならない。
☆成長の条件はいろいろあるが、拙著「名門中学の作り方―未来志向の学校を選ぶ8つのポイント」(学研新書)では、次の8つを紹介した。
①開く力
②横断する力
③創造的にコミュニケーションする力
④世界標準の知を探究する力
⑤共学校化する力
⑥結びつける力
⑦ステークホルダーをマネジメントする力
⑧私学の系譜を持続可能にする力
☆実際には8つの力が独立しているわけではなく、教育や学びの包括的な力の特徴的側面を表しているだけかもしれない。しかし、このような切り口で教育をつくりあげている学校を訪ねると、たしかにそこには成長するエネルギーが彷彿としているものである。
☆今回もそのエネルギーを感じたが、8つの中で、まずは創造的にコミュニケーションする力があふれているのが伝わってきた。
☆もともと、ある合同説明会で同学園の在校生と対話する機会を得たが、そのときから学内の知的環境の存在に興味をもっていた。どんな学校ですかという問いかけに対し、質問の幅が広すぎるからもう少し絞ってくれるとありがたいのですがと前置きされたが、それでもすぐに、自分で考える時間がとにかく多いし、それに自己判断を大切にしてくれる先生が多いですと回答してくれた。さらに、具体的な教育活動で、そのような考える力や判断する力がどう活用されているのか対話が続いたが、そこの部分は忘れてしまった。とにかく議論ができる環境が工夫されているという印象を強烈にうけたのを鮮明に覚えている。
☆今回もそれを先生方との対話の中から確認することができた。高等教育機関とくに東大のような高度研究大学を意識しているのだと思うが、そのような機関にきちんと接続できるという意味で本物の高大接続教育を実施しているという自負も了解できた。
☆東大の小宮山前総長の言葉でいえば、「自律分散協調系」の環境が研究には必要なのだが、その準備がすでに同学園ではできているということだろう。
☆小宮山前総長は、研究機関のもう一つの話として、「知の構造化」というキーワードを使っていたが、この点に関しても同学園では、6年間のスパーンを通して、生徒の心と知の発達段階に応じて知的環境を組み立てる教育を積み上げている。
☆ただ、発達段階というからには、心と知の発達の基準や心と知のDNAのようなつながりについてそろそろ経験ベースから理論化する時期であるという問題意識もあり、あっここにさらなる飛躍、つまり内生的成長のヒントがあると感じさせられた。
☆モデルとしては、OECD/PISAモデル、コールバーグモデル、ハーバーマスモデル、エリクソンモデル、新ブルーム派モデルなどの話題がのぼり、発達心理学的アプローチをするのか、認知心理学的アプローチをするのか、プラグマティックなアプローチをするのか、言語論モデルでアプローチをするのか、社会学的アプローチをするのかという話にもなった。
☆興味深かったのは、どのモデルを選ぶかというよりも、生徒1人ひとりの成長に「ちょうど」マッチングするような柔軟な独自のモデルをつくらなければならないというコンセプトについて議論が及んだことだった。
☆成熟期に突入した学校は、さらなる飛躍ができるかどうかというよりも、内生的成長としての飛躍をせざるを得ない運命にあるという、校長と法人本部長の静かなる決意に感じ入ったひと時だった。
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