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クオリティスクールの新コンセプト[010]

クオリティスクールの新コンセプト[009] のつづき。

☆ときどきデザイン事務所の社長H氏のところを訪れる。デザインとはDe-Signと思っているから、何も建物としてのデザインや広告のデザインのことだけではない。庭園とか言葉とか思考とか感情とか企画とか、なんらか形(FORM)にすることをDe-Signだと思っている。

☆そんな話は、受験市場に立脚した学校のパンフやポスターをつくっている広告代理店のスタッフとはなかなかできない。「学校側は安くてインパクトのあるものを作ってほしいのですから、本間さんのそんな能(脳)天気な話なんか僕らにはわからんですよ」ということになりがち。もちろんそうでないスタッフもいるが、圧倒的に少ない。

☆大手ゼネコンの設計者も意外や受注できなければ意味がないと思っているから、フランク・ロイド・ライトやバウハウスのモダニズムの斬新さは何だったのか、それが日本の京都の庭園ではなくて大名庭園と共通項があり、それが学校の建築や教育カリキュラムにどう影響するのかなんて談議になったとたんに話題をさっと変えられる場合が多い。

☆イサム・ノグチを研究している中堅の建築設計事務所の設計者のほうがはるかにおもしろい。要はアートと教育を媒介する言葉とかメディアによって場と時間をどうデザインしたらよいのかという話にならなければ、教育のデザインの見通しがたたない。

☆私学の建築委員会の先生方で、この手の話は大好きという先生方はほんとうに多いから、そういう話をステークホルダーのスタッフももっとしたほうがよいのに。。。

☆ゲーデルとエッシャーとバッハがどうつながるのか?言葉や人生はトートロジーで、終わりなき日常をつくりがちがゆえに、それをDe-Signし直して、生きる価値や甲斐を、つまりモチベーションをつくる仕掛けをどうやって組み立てる(De-Sign)かという視点がなければ思春期をサポートする教育プログラムはできない。

☆そんな話を私立中高一貫校の先生方と日々しているのに、どうして学校側は安くてインパクトのあるものを作ってほしいと一般化できるのだろうか。

☆それはしかし、受験市場にあっては正しいのである。私学市場ではそうではないだけのことである。

☆さてH氏の話に戻ろう。彼が言うには、「De-Signのことを考えるなら、最近おもしろいのは料理のレシピですよ。特にこれから女性の感覚大事でしょう。816万人/月も利用する料理のレシピサイト知っていますか?」

☆知らないと返答すると、H氏は「女性の感覚にアンテナがはられていないのかもしれませんよ。利用者の9割は女性だからしかたがないですけど、だから結構大事な気がするんですよね」とアドバイスをくれた。そして、しばらくして、日経ビジネス(2010.1.11号)の「佐野陽光氏(クックパッド社長) 料理と笑顔で世界目指す」という記事を贈ってくれた。

☆「グッドはやらず、ベストしかやらない」という佐野氏のサイトで謳っている信念がベースに編集されていた。佐野氏のベストの定義は次の通り。

1) 今やろうとしていることで料理は楽しくなるか。
2) やろうとしていることは世界一につながるか。
3) やろうとしていることは儲かるか。

☆「料理」の部分を自分の仕事に置き換えれば、これはクリエイティブ・クラスの仕事条件でもある。

☆佐野氏は、中高時代をシンガポールやアメリカの学校で過ごし、慶応大学湘南藤沢キャンパスで通常の日本人とは違う学びのDe-Signの中で暮らしてきたという。だから、こういう発想なのかもしれない。決して順風満帆な会社経営をしてきたわけでもなく、紆余曲折の体験を乗り越えて今日の成功をつかんだようだ。

☆年齢は36歳。こういう父親の子どもたちが選択する私立中高一貫校とはどんな学校なのだろうか?少なくとも受験市場でベストな学校ではあるまい。私学市場でベストであればよいのではないか。もちろん受験市場でも私学市場でもベストであるエクセレントスクールが「ベスト」なのかもしれないが、いずれにしても佐野氏のようなクリエイティブ・クラスの人材が選ぶ私立中学受験の時代は、すぐそこにやってきている。

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